まぶしい夕日に少し目がくらみました。なんだか隣に彼がいるような気がしたからです。

この長い坂を上る度に、彼を思い出して泣きそうになるのです。いつもあと少しだからと手を引っ張っていてくれた彼はもういません。頭では理解しているのに心が言うことを聞きません。

不意に後ろから声がして振り返ると、幸せそうに笑いあう男の子と女の子がしっかりと手を繋いで歩いていました。わたしは目を細めてその光景を眺めます。私と彼もあんな風に、幸せそうに見えていたのでしょうか。


「…泣かないって、決めたのにな」


小さく呟いた声はやっぱり夕日に吸い込まれていきました。涙が次々と溢れてきて、止まりません。

好きでした、愛していました、わたしの気持ちはちゃんと伝わっていましたか。わたしにはあなたしか見えていなかったのです。不器用なところも口下手なところもなんだかんだで優しいとこも煙草の匂いもマヨネーズが大好きなとこだって、全部全部愛おしかったのです。
好きだと言われたときは舞い上がるほど嬉しかったし、初めてのデートはあなたにまで心臓の音が聞こえそうなくらいドキドキしていました。

けれど時は残酷なもので、今ではあなたの後ろ姿も見えなくなってしまいました。
いつかまた会えたとき、私は笑えているでしょうか。






夕日坂


(今は一人でこの坂を上るのです)






(100304)



「The mind song」さまに提出。



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