maru-ma06 | ナノ


初対面(まるマ/グウェン)





※男夢主×男キャラ


「ヤツが戻ってくる…だと…?」


バサバサッ、と書類が落ちる音と一緒に、らしからぬ声が聞こえた。
今の声はグウェンダル…だよな?
一体何があったんだろうか。
興味津々でおれはその声の元へ向かった。


「今のどーしたの?あ、コンラッド」

「陛下。いや、ちょっとね…グウェンダルの部下…で良いんだっけかな、が帰ってくるんだ」

「…え、それだけ?」

「ええ、それだけ。ただアイツは大分厄介だからな…」


なんだ、部下が帰ってくるだけか。
にしてもなんかコンラッド、その人と知り合い?
グウェンダルが落としたっぽい書類を片付けていたコンラッドだけど、おれの視線に気付いたのか言葉を続けた。


「アイツとオレ…とあとヨザックは幼馴染みみたいなものなんだ」

「へえ…って幼馴染み!そうなんだ!」

「まあ実際は何十年かアイツの方が年上ですけどね」

「何十年…あ、あーそっか…うんうん」

「…とにかくだ、私は自室に籠る。絶対にあれをいれないように」


そうグウェンダルが言いかけた瞬間バンッ、と扉が開いた。


「閣下!シュレーゲルハイネ卿が…って陛下!?」

「あ、おれの事は気にしないで」

「は、はあ、ええとですからシュレーゲルハイネ卿が到着されました!今すぐグウェンダル閣下を呼べと…」

「…無視しろ」

「はっ、あ、しかし来なければ道端で拾った子猫の命は無いと…」

「なっ……、ふざけるな!」


グウェンダルは机を思い切り叩くとズカズカと出ていった。
部下の方は少し呆気に取られてたみたいだけどおれたちに一礼すると後を追っていった。
なんていうか、凄い人みたいだな…。


「陛下、オレたちも行きますか?」

「うん!コンラッドたちの幼馴染みって気になるしな。あ、それと陛下って呼ぶなよ名付け親」

「…はい、有利」





「ハーディ!わざわざこの私に行かせるとはどういうことだ!それに子猫ちゃ…ゴホン、猫を使うとは…!」

「そうじゃなきゃキミは来てくれなかっただろう?安心するが良い、子猫ちゃんは既にさっき出会った双黒の二人組に預け済みだ。しかしまさか双黒二人に会えるとはな…」


おれ達が着いた頃にはもうシュレー…ええと、まあいっか。その幼馴染みさんはグウェンダルとご対面していたらしく……え?
ちょっと待て、グウェンダルの部下で、コンラッド達の幼馴染みさんって、もしかしなくてもあの…。


「思っていたよりも小さいでしょう?」

「え、あ、でも、コンラッド達よりも年上って」

「今チビと言ったのは貴様か!ってなんだコンラッドか」

「おまけに地獄耳なんだよね。やあハーディ、相変わらず元気そうだな」

「私が元気じゃなかった時なんてなかったと思うのだよ?おや、そちらは…さっき会ったよな?子猫はどうしたのだ?」

「え?いや、初対面ですけど…あ、もしかして」

「ハーディ、陛下にいきなりその態度は失礼じゃないかな」

「…ああ、貴方がユーリ陛下!むむ、じゃあさっき出会ったのは…まさか陛下の偽物!?あの眼鏡はともかくもう一人の方は気弱そうでいいヤツだと思ったが」

「あのー、それ多分おれの弟だと思うよ。双子の」

「双子?ふむ…だからそっくりなのか。確かにあの気弱さがキミには見当たらないしな。いや、失敬した。私はシュレーゲルハイネ・ハーディ、以後お見知りおきを」


ハーディはそう言うと手を差しのべてきた。
なんていうか、目の前にくると更に、それこそ名利よりも小さいような…あ、禁句っぽいよな。
おれは言葉を飲み込んで握手に応じた。


「あ、うん、おれはユーリ。宜しくな!」

「こちらこそ。…少しグウェンを黙らせてくるか。陛下、また後でお話しましょう、とりあえず失礼します」

ハーディはそう笑って言うと小さく会釈をし、グウェンダルの方に何か言いながら戻っていった。
…なんだか嵐のような人だなあ。
いや、人の事言えないのかもしれないけど。
誰かに似ているような…。


「騒がしい人ですいません、いつもあんな感じなんだ」

「へえ…なんか凄い人だったね…それに眼鏡のって…くくっ、村田酷い言われようだなあ」

「全く、恐らく彼が猊下だって気づいてないんだからな…」

「そういえばハーディってグウェンダルの部下なんだよね?その割には随分…」

「ああ、彼はオレ達の幼馴染みであると共にグウェンダル達の友人でもあるんだ」

「友達かあ…ん、達って?」

「アニシナですよ。ハーディも発明好きでいつもアニシナと会うと発明バトルを繰り広げるんで今はなるべく接触させないようにしてますけど」

「ああ、アニシナさん…」


さっき誰かと似てる気がするって多分アニシナさんだよな…。
あの強引さっていうの?アニシナさんに似ている気がした。


「グウェンダルも苦労してるんだなあ」

「ええ、まあそうですね」


コンラッドは爽やかに笑った。





「もう何年間か屋敷に籠ってもらってても良かったんだけどな」

「それが大変なのだよ、私がいつもの様に研究に勤しんでいたらいきなり爆発してだな…」

「は…?」

「今、私の屋敷は絶賛修繕中だ!兄上は留まると言っていたが私にはあんな風がピューピュー吹き荒れるとこは勘弁だ。そこでだ!ならばグウェンダルかコンラッドにお世話になろうと思って此処に参上したと言うわけだよ!」

「…お前はそうやっていつも私を困らせるんだな」

「今にはじまった事じゃないだろう?グウェンダルはそろそろ私に慣れると良い」

「なんでそう上から目線なんだ…勝手にしろ、私は一切手伝わないからな、一人で全てやれ。良いか、一人でだからな?」

「はいはい。後であの気弱そうな陛下そっくりさんに聞いてみるか…しかしグウェンダル、キミはちっとも変わらないな」

「話を聞いていたのか!全く…お前は更に酷くなったようだな」

「失礼だな!私はそろそろグウェンダルが寂しがるかなと思って来てやったと言うのに。あ、屋敷が修繕中なのは事実だぞ?」

「どうして私がお前に会えないごときで寂しがらなくちゃいけないんだ」

「でも私は寂しかったのだ」

「…そうか」

「そうなのだよ」


顔を反らすグウェンダルにハーディはそう答えると笑った。




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