maru-ma03 | ナノ


越えられない壁(まるマ)





※男夢主×男キャラ


「あ、それ…」

「どうかされましたか?」

「えっ…う、ううん…。なんでもない」


コンラッドのその服、確かお気に入りって言ってたような…。


***


「…ユーリ、さっきからメーリが見当たらないんですが…」

「名利?ああ…じゃあ兄貴の部屋かも…」

夕食後、陛下の両親…いや、母君の美子さんと他愛もない話をしていたがいつの間にか一人少なくなっている。こっそり彼の事を聞いてみると陛下は真上を指しながら答えた。
兄貴…というとさっき夕食前に帰ってきた眼鏡をかけた青年であろう。最初に見た時から不快感を抱いているのは明らかであった。
上を指したということは行っても構わないということだろう。俺は小さく頭を下げると二階へと上がった。

ニッポン、の家はやはり狭い。ギュンターがきたら卒倒するだろうに、と思いながら上がりきったのは良いが一体どの扉が…


「これから……」


聞き覚えのある声ともう一人、低い声にカタカタ、と音がする。
何を言うべきか…少し考えてから俺は扉をノックした。


***


「勝利が眞魔国の事知ってるなんて意外だったな」

「それは俺の台詞だ、有利はともかく名利まで行っていたとはな」


母さんの相手はゆーちゃんに任せてさっき不機嫌度MAXだった勝利の部屋を訪れるとやっぱりそうだった。
真っ暗な部屋でパソコンやってて目悪くなるよって言ってやったのにもう悪いからなんて言うからちょっとイラッときたんだけど。
でも母さんに質問攻めは勘弁だし勝利も特に言わなかったからボクはここにいることにして今に至る。
眞魔国の事を聞いてみると思ったよりもあっさり返事がきた。あれ、不機嫌なんじゃないの?


「だから…言わなかったかのは悪かったって。ゆーちゃんも言ってたけど現実的じゃないじゃん」


あれ、返事こなくなった。
これはつまり眞魔国の事もちゃんと話して欲しかったってこと?
まあ兄弟で隠し事なんて喜ぶ事では決してないよね。


「これからはちゃんと話すよ、もう隠す必要もないしね」


そうは言ったけど勝利は相変わらずデスクトップとにらめっこ。
折角譲歩してやってるんだから…ってにらめっこ?どうせまた分岐点でしくってるんだろ、って覗いてみたら。


「メール?ん…」


ボクが画面を覗いたのと同時に扉を叩く音がした。


***

「…どうぞ」

「失礼するよ、声がしてたから…メーリもいたのか」

「コンラッド」


促されて入ってきたのはコンラッドだった。どうしたんだろう…あ、そういえばコンラッドにはかなりお世話になってるから改めて紹介するべきかな。
なんて考えながらコンラッドに近付こうとしたら、突然後ろに引っ張られた。


「うわっ、え…勝利?」


相変わらず勝利はデスクトップとにらめっこしながら、でも何故か片手でボクのフードを掴んでる。
…ん?なんなんだろうこの状況。


「何の用だ」

「メーリの様子が気になっていたのとキミにも挨拶がしたくてね。…迷惑をかけてすまない」


うーん、この状況も中々に謎だけどそれよりコンラッドが着てる服…。


「そのシャツ、俺のだ」

「ん…ああ、無断で借りている。キミの母君が用意してくれて…」

「それお気に入りなんだ、汚すなよ」

「ああ、やっぱり!あ、ごめん…」

「いえ。…気を付けるよ」


もうこれ以上は話すことはない、だろうか。
どうやらまだここにいるつもりらしいメーリに小さく頭を下げると俺は部屋を出た。
…何か彼が言いたげな顔をしていたが、きっとあのお兄さんが邪魔をしてしまいそうだし。

それよりも。


「さっき言いかけたのはこの服のことか…?」


陛下曰くメーリはなんだかんだで兄貴っ子、らしい。
確かに、友人を放って不機嫌な兄の様子を見に行く辺り、そうなのかもしれない。


「兄さん、か…」


***


「…そろそろ離してくれない?この体勢地味に辛い、った…いきなり離すなよ!……勝利?」

「…いや、随分アイツに懐いてるんだな」

「懐くって…まあコンラッドは眞魔国では一番仲良くしてるかな」

「あのお前がか…」

「え?」


聞き返したがなんでもない、と言われてしまい、これ以上聞いちゃいけない気がして、ボクはもぞもぞと勝利のベッドに潜り込んだ。


.......................


back




- ナノ -