Tales2 | ナノ


世界が煌めいた瞬間(TOS-R/リヒター、アステル)





「私……ここで、死ぬん、です…?」


苦しい、辛い、痛い。
なんで私はこんな目に合ってるのか、訳がわからない。
お腹…空いた、な…
私…ワタシ、は…



「ん……こ、ここ…」

「…あれ、起きた?」

「え……」

「…ねえ、リヒター、起きたよ!…ねえ、リヒターって!」

「うるさい聞こえている、アステル」

「リヒ、ター…ア、ステル…?ーっ」

「ん、あ…ええと…そんな怖がるな、俺達はただ…」

「リヒターみたいな眉間に皺寄せてる人に怖がるなっつても無理だと思うよ?」

「アステル!」

「あ…あたし…や…」

「ん?…別に僕達はキミを取って食ったりなんかしないよ。てかお子ちゃまに興味ないしね」

「え…あ…」


ぐううぅぅぅ。


「…ぷっ、お腹空いてるの?」

「え…」

「食べれば?お腹空いたんでしょ?」


金髪の少年は、そう言うとにやりと笑った。



「…よく食うな…お前」

「あ、おいし、くて…ご、ごめんなさ」

「謝らなくていい、腹が膨れるまで食うといい」


赤髪の青年、リヒターさんと金髪の少年、アステルさんは街中で倒れていた私を見つけて家までつれてきてくれたらしい。おまけに食事まで出してくれた。
よく、わからない。大人は怖い。
彼らは、よくわからない。
前に食べ物をあげるよ、と言われついていった先でひどい事をされたこともあった。
だからよくわからない。
もしかしたら悪い人かもしれない。
けど正直どうでもよかった。死ぬほどお腹は空いていたから。


「そんな美味そうに食ってるやつなんか久々にみたなあ」

「ふ…え…?」

「…ついてるぞ」

「う…むぐ」


シチューはとっても、美味しかった。



***



「色々聞きたいことが山程あるね…名前はなんていうの?」

「あ…ある…アル、シエラ…レヴィ…」

「あれ、ちゃんと名前あるんだ。親は?てか家は?キミそもそも」

「アステル!そんな一度に聞いてもわからないだろう」

「……パパが死んで、ママ、どこか、行っちゃった、の…家は、研究員の、人がき…て……」

「わかった、辛い事は無理に思い出すな」

「アルシエラ…ね、キミろくに寝てないでしょ?寝て」

「え…」

「いいから。ね?」

「や…いや…っ」


何かを無理矢理口に押し込まれ、私はそのまま眠りについた。


***


「別に僕はいいよ?まあ…いつもあんな食べるのは困っちゃうけど」

「そうだな…どうやら親も家もないようだ…それに…」

「……ああ、多分ね。それに研究員って…

「…もしかしたら、俺達の知り合い、なのかもな…」

「ああ…くそっ、どうしてあんな子を…」

「あ、の…」

「あ、おはようアルシエラ」

「お…おはよ、ございま、す」

「おはよう」


リヒターさんとアステルさんは小さく笑うとおはよう、と返してくれた。
…何か、胸の奥があったかくなった。
目頭が、熱くなって、それで、


「キミ、泣いてるの?」

「え…」


頬を、何かが伝った。
泣いてる?私が?…なんで?


「…泣きたい時は、泣けばいい。我慢する必要なんて、ないんだからな」

「リヒター…さん…っ、うっ、ぐ、うわああぁぁああん」


おはよう、なんて言ってくれる人はいつからかいなくなってしまった。
泣いたって疲れるだけで、誰も助けてくれなくて。
…寂しくて、辛くて、温もりが欲しかった。

声を上げて泣くアルシエラを見て、アステルとリヒターは目を合わせた。
気持ちは一緒なのか、二人は小さく頷くと、アステルがそっとアルシエラを抱きしめた。


「…アルシエラ、僕たちと一緒に、暮らそう?」


アステルの腕の中で、アルシエラは小さく頷いた。



***



「うーん…アルシエラ…アルシエラ…」

「な、なんです、アステル!」


いつものごとく難しい数式で頭を悩ませてると思ったら、アステルはアルシエラの名を呟いた。
いきなり名前を呼ばれ、アルシエラは少し戸惑う。


「なんかさ、長くない?ね、リヒターも思わない?」

「………アルシェ」

「それだ!」

「わああっ何やってるんですレポートが…」


思い切り机を叩き散らばったレポート用紙を無視し、アステルはアルシエラの肩を掴んだ。


「へ?」

「アルシェ!」

「え、あ…はい…?」

「リヒターにしては良いじゃん!…よし、アルシェ、宜しくね!」

「あ…」


もしかしてそれは私のあだ名なのか。
あだ名…
はじめての響きに、アルシエラは少しくすぐったそうに笑うと言った。


「宜しくお願いします。アステル、リヒター」



.......................

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