Tales01 | ナノ


はじめての出会い(TOW2/ユーリ)





※男夢主×男キャラ
 学パロもどき。

「…どうぞ」


ノック音が聞こえ、俺は入るのを促した。休憩はこれで終わりか、ともうすぐ勝敗が決まりそうなサッカーゲームを静かに閉じた。


「ふーん、あんたがヴィル、で合ってるよな?」

「えぇ…」

入ってきたのは俺より少し年上だろう黒髪の青年だった。長髪、なのだがウザったい感じはせず、そこら辺の女よりよっぽど綺麗だった。
場違い、だ。
大抵此所に来るのはパッとしない男とか醜い男とか。要するにモテないような男ばかり。なのに今入ってきた彼といえば。

イケメンなのだ、普通に。


「友人からあんたの話聞いてさ、興味持ったんでね」

「はぁ…しかし貴方が来るような場所では」

「ん?オレの事イケメンに見える?」

「えぇ、まぁ」


俺が即座に答えると青年は吹き出した。今、何か変な事でも言っただろうか。青年は突然俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でると隣に座った。


「噂以上に面白いなぁ、あんた」

「面白い…です…?」

「あ、別にそいつらが言ってた訳じゃねーけどさ、話聞いた時に絶対面白いと思ったんだよなー」


一体この人は何なんだ。そもそも何の為に此所に来たんです?もしかして此所で何をするのか知らないのか。


「用が無いなら帰ってくれませんか?」

「つれないなぁ、あんた友達いないだろ?」

「だったら何です」


一瞬思い浮かんだ顔があったがいやいや、あいつは違うよ、うん。


「あ、お金払えば良いんだよな?えっと…これで良い?全所持金なんだけど」

「…はい?53円…ですけど。馬鹿にしてます?」

「悪いって、そんなつもりないけど今…あー、バイト代入る前でさ、入ったらちゃんと渡すし」

「バイト代入ったらにしてくれません?」

「…そ、別に良いけどさ。じゃあオレは此所の事でもばらそうかな」

「ーっ、それは…」


なんてやつだ。少しでも良い人とでも思った俺が馬鹿だったのか。此所がバレるのは困る。恥とかじゃなくて、あいつが。あれが何してくるか、考えただけで恐ろしい。
俺が狼狽えると青年はニヤリと笑い、俺の肩に腕を回した。不意だったので、俺は小さく肩を震わせた。


「…意外と可愛いんだな」


「う…っるさい!」


調子が狂う。可愛いなんて、言われたなんて初めてだし嬉しくもなんともない。
寧ろ苛立つだけだ。しかもよりによってこんなイケメンに!


「怒るなって。なぁ、あんたって何年だ?」

「…中3ですけど」

「中3!?マジか…てっきり高1か2だと…」


何にそんな驚く事があるんだろう。しかし年上に見えてたのは少し嬉しい。


「あ、因みにオレは高2なんだけどさ。はー…中3か…。あんた、ほんと何でこんな事してるんだよ」

「趣味の為…とか?」


間違っちゃいない。オタク人生は色々金がかかるんだ。イベント行きたいなぁ。別に好きでやってる訳じゃない。だから適当に言い訳しとかないと自分が持たない。


「趣味…って。そんな事の為だけに?」


そんな事…まぁそうだろう。実際、八割以上は使い道もないし使う気にもなれなくて部屋に放置してある。


「別に…なんでも良いでしょう」

「ま、確かにオレには関係ないわな。…また来ても構わないか?」

「…なんです、また貴方来るつもりですか。まぁ、お金があるなら何でも構いませんが」

「じゃあ今度はちゃんと持ってくるよ」

「全く何の為に来たんです貴方は…」


そう俺が呟くと、青年はニヤリと笑い答えた。


「あんたに会う為に決まってるだろ?ヴィルヘルム・アルテ・グラニデさん」

「…少し足りませんか、いえ、何故それを」

「調べればすぐ出てくるだろ?」

「まぁ…それもそうですか」

「っていうかえ?足りないってあんたもっと名前長いのか…?」

「えぇ、まぁ」


青年はキョトンとした顔で暫く呆然としていたが、やがて、大笑いし始めた。


「はははっ、やっぱりあんた面白いなぁ!是非友達になりたいな」

「友達?いや、別に俺は。というか何が面白いんです…」


この人の笑いのツボは謎だ。変な人…。それに友達に?…いらない。俺に友人なんて、必要ない。


「何がって…くくっ、あ、オレは2年C組のユーリ・ローウェルってんだ」

「そうですか」

「思った通りの反応だな、おい。まぁ構わないけどさ。ヴィルは何組なんだ?」

「別に…」

「教えてくれないのか。まぁこれから知れば良いんだしな。っと、じゃ、オレは帰るわ」

「これから…っていうかえ、何もしてないんじゃ…」

「何かしたかったのか?」

「そ、そんなつもりは…いえ、でも…あっじゃあ53円はお返し…」

「いーよ別に、話し相手になってくれたつー事で」

「それでは…」

「じゃあまた来ても良いか?ってまぁ断られても来る気満々だけどさ」

「…勝手に、どうぞ」

「じゃあ勝手にするから、じゃあまたな!」

「え、あ…はい…?」


ユーリ、と名乗った青年は手をひらひらと降ると、窓から飛び降りて、着地した先にいた金髪の青年…友人であろう、と帰っていった。


嵐は突然やってきた。
俺の人生を狂わせる、嵐が。



.......................

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