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(*BLD)

僕たち四人の卒業おめでとうパーティーは…といっても元々お姉ちゃんと澪がメインで侑兄と僕はおまけみたいなもので…まあ、結局僕だけがおまけになっちゃったんだけど。 兄弟が全員集まって、少し派手に飾られたいつものリビングで騒がしくやっていた。 と、同時に祈織兄が留学、要兄は修行の為本山に篭ることになり、昴兄は九州のバスケチームに入るから、その三人のお別れパーティーも兼ねていた。 四月から僕や澪は高校生に、兄弟も三人がこの家を出ていく事になり、今までで一番変化の時期、と言えるのではないかと思う。 中学は澪と同じだったけど高校は僕は祈織兄が通っていたブライトセントレア学院に、澪はお姉ちゃんと侑兄が通っていた都立陽出高校に通う事になり、高校が分かれたのも少し大きいかもしれない。 新しい環境が心配なのもあるし、見慣れた兄弟達が離れて行くのはやはり寂しい。 光兄が出てしまった時も寂しかった。 棗兄が出て行ってしまった時は、僕は…

「どうした、郁?主役が食べないでどうするんだよ?」

いつの間にか食べる手が止まっていたらしく、それに気付いた棗兄が不思議そうに覗き込んでくる。 棗兄との関係は、棗兄が出て行った時よりもずっと…良くなっているとは思うけど、実際はどうだったんだろう。

「主役はお姉ちゃんと澪でしょ?ちょっとお腹いっぱいになってきたなって思っただけ」

「相変わらず少食だなお前は…折角京兄やアイツも作ったんだろ?食べなきゃ勿体無いだろ。お前が食べないならオレが食べるぞ」

「…うん、別に構わないよ」

「お前……どうした?卒業式、やっぱり寂しかったのか?」

「まあね…この三年間、有り得ないことばっかりだったし。思い出したら少し懐かしいなっていうか。…それに、僕がまさか祈織兄のとこに行くとは思ってなくて」

「オレにとってもこの三年間は今までの三年間とは全然意味が違ったさ…それにしてもそうだな、お前がまさかセントレア学院に行くとはな…なんでまたそこにしたんだ?」

「ん…ちょっとね、やりたい事が出来たっていうか」

そういえば、受験時に何故そこにするのかと聞かれる度にはぐらかしていた。 …進学が決まっても尚、僕は曖昧な返事しかできなかった。 棗兄も納得はしてくれないらしく、その答えに暫く黙ってしまった。 もう別に言っても良いのだけど、やはり棗兄に打ち明けるのには少し勇気がいる。 そんな僕の気持ちに気づいたのか棗兄は少し寂しそうに笑ってから僕の頭をわしゃわしゃと撫でた。

「悪い、お前が話してくれるまで待つってオレ言ったもんな。しつこくてごめんな、今のは忘れてくれ」

「棗兄…ごめん…」

ほんとは棗兄にそんな表情、させたくなかったけど。 もう言ってしまってもいいはずなのになんで僕はこの一言が言えないんだろう…。

「…でも郁もそうやって段々自分の行きたい道を、自分で選んで進んでいくんだよな。…いつまでも、子供だと思っていたけれど当たり前だよな、成長するんだもんな。兄としては嬉しいような寂しいような、そんな気持ちだよ」

「なにそれ、なんか兄というよりそれ親って感じだよ」

「まあな、間違ってもないだろ」

僕は話を合わせて笑ったけれど、僕がなんとなく言い出せなかった理由が分かった気がした。 棗兄がそうやって寂しがるだろうと思ったからだ、そういう思いをさせたくなくて、まだ手のかかる弟でいたくて。 内緒でブライトセントレア学院を選び、合格してしまった以上、今更何を言うのやらって感じだけど。

「僕はね、棗兄の後ろじゃなくて隣を歩けるような人に早くなりたいのと同時に、手のかかる弟でもいたいのかな。いつまでも棗兄の後ろで守られてるのは嫌、寧ろ棗兄を守れるような人になりたいの」

「じゃあ今は手のかかる弟でいてくれよ。焦らなくてもお前も大人になるんだ。オレの隣を歩くのはそれからでも良いだろ?でもお前が子供でいられるのはもう、そんなに長くないんだからな」

「棗兄…僕が大人になるまで待ってくれる?冷めちゃったりしない?」

「そんなわけ無いだろ?兄としても、オレ自身としても、お前が大人になっていくの楽しみなんだからな」

棗兄はそう笑ってから一呼吸おき、今度は少し照れくさそうに頭をかきながら続けた。 どうしたんだろう?

「それよかお前いつの間にそんな男前になったんだ、オレを守るって…ビックリしたぞ、年甲斐もなくなんかこう…キュンときたというか…はは、なんか恥ずかしいな」

「…その内立場が逆転するかもね」

「な、えっ、な、何言って」

「なんでもない、棗兄食べないなら勿体ないから僕が食べるよ、良い?」

「ま、待て、とってくな!というかお前それさっきオレが言ったことだろ!」

いつもはかっこよくて、大人っぽくて、僕は見上げているだけの棗兄が、今はなんだか可愛く見えてしまい、僕は小さく笑ってしまった。





くて近い、貴方との距離


郁棗も有りだと思った瞬間

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