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リガさん





CAST:ヴィル,リガ(グラニデ)

「ヴィル!修行だ修行!」

「…はい?」

それは昼下がり、パフェを食べている時だった。



「ごめんってば、デザートタイムを邪魔したのは」

「別に、気にしてませんけど」

「…絶対嘘」

修行、と叫ばれ強引に彼女、リガに連れてこられてメスカル山脈。何故いきなり?しかも俺ですか。

「いつもの相方はどうされたんですか?」

「相方?…あぁ、シャルトル?」

特に接点がある訳でもないのに俺を連れてきたのはどういう意味だ。何か、レベル上げの競争でもしてるのだろうか。

「…あんな胡散臭い馬鹿、知らない」

「はぁ…なんですか、喧嘩でもされたんです?」

「…違う、あいつが…悪いだけ」

要するに喧嘩されたんですね分かります。もしかして俺に仲介役を?冗談じゃない。面倒な事はお断りだ。
まぁ今も面倒なんですけどね…。
きっとリガが頼めばもっといい男が来ただろうに。……彼とか、彼とか彼…なんか虚しくなってきた。ムカつくから帰ったら特大モンブランでも作って貰おう反対意見は認めないぞ!
なんで俺が彼女と二人きりでなくちゃならないのか。会話途切れる事必須ですね。あ、別に嫌いな訳じゃないですけど、苦手。

「…ふん、お前、私の事嫌いだろう?」

「いえ、そんな事は全くないですけど」

「即答か…」

いきなり何を聞かれたのかと思った。別に嫌いじゃない、事実だ。さっきもいったように苦手なだけだ。

「まぁ構わん。とりあえず私の鬱憤晴らしに付き合ってくれるよな?」

「鬱憤…やはり喧嘩したんですか」

「違…違うからっ」

「はいはい、分かりましたから」

「分かってないだろ!」



ヴィルはよく分からんやつだ。正直言って何を考えているか全然分からない。以前アルティアラに相談したら彼は顔に出やすいし結構単純だし(褒めてたらしい)後は甘い物で釣ると一発だと教えてもらった。
…うーん、表情を見てもよく分からないんだが…。

「何か…俺の顔についてます?」

「え?あ、いや…別に…」

「そうですか、何かあったら言って下さい?小回復くらいなら、できますから」

「あぁ…」

いやいや余裕でキュアだって出来るだろ。わ、私だって…ファーストエイドくらい!
因みに今は私が前線でヴィルが前〜中衛。戦いが終わった後、体力ヤバそうだったらお互いに回復するくらいだ。
…面白いくらいに協力プレイがない。お互いそれぞれ個人でやってるようなものだ。

「後…ブーボア10体か」

「そうですね、一度休憩しましょうか」

「あ、あぁそうだな…うむ」



「そういうリガさんも俺の事避けてますよね」

「え?いやそんな事は…いや、すまない。避けてるな」

「おや…あっさり認めるとは意外ですね」

「お前こそ、休憩なんて絶対しないやつだと思った」

ヴィルはそうですか、と言っただけだった。私も、話す事が無かったので黙る事にした。
…風の流れる音が聞こえる。それに続いて風車が回る音。

「そういえば…ヴィルは何処から来たんだ?」

少し、彼の事が知りたくなった。皆結構故郷の話とか昔の話をするのに彼は何も話さないなと思って…あ、もしかして聞いちゃいけなかったのか…禁則事項です☆みたいな!

「それが…分からないんですよ、おかしな話でしょう?気がついたらバンエルティア号の客室にいたんですよ」

「船にか?」

「えぇ、カノンノが言うには空から降ってきた、らしいですけどふふ、有り得ないですよね」

「お前…そんなメルヘンな趣味だったんだな…」

「いえいえそんな…はい?」

「そうか悪かった、お前にそんな乙男的思考というか中二的思考というか、それでいてオチは記憶喪失か?」

「いやオチも何も事実なんですが」

「そうかそうか、大丈夫だ、私は誰にも言わないから」

「あの、思いっきり勘違いされてますけど、色々」

予想外だった。リガさんが実はそんなに話を聞かない人間だったとは。むしろ暴走してるんですが、こういう人間の扱いは苦手だ。ラグと言いジャティと言いラグ…あいつ大真面目にくたばりませんかね、最近部屋帰るといたりして…俺ちゃんと鍵備えてかけたんですけどね…!

「あ、そういうリガさんは旅費が足りなくなって来たとか聞いたんですが」

「あぁ…モン達を…あ、いや、ある仲間達を探していてな、途中ではぐれてしまって」

「それでお金が無くなって?」

「うむ。まぁあいつらも絶対、本気で私達を探す訳も無いしな、気長に行けば良いかと」

「結構適当ですね…」

「む、でもこれが一番効率良いんだ。稼げるし情報も入るし」

「ふーん…そんなもんですか」

「そんなもんだよ」

風に靡いた黒髪が、ただ、綺麗だった。何を想ってるのか、俺には到底分かる事もないが少し、寂しい表情な気がした。

「…よし、じゃあ残りも始末するか」

「そうですね…」

そういえば最初も思ったが何故彼女は俺を選んだのだろう。ただ目の前にいたから?なんとなく?その気紛れで俺はパフェを駄目にしたのか。…まぁ今更何も言えませんか。別にこの修行が無駄とは思わないし。

「ヴィル、お前と話が出来て良かった」

「はぁ…何をまたいきなり?」

「…俺の事、嫌いになるなよな」

立ち上がったリガは小さく笑うとそう、呟いた。何の事かサッパリだったが、後ろの青空が妙に綺麗で、彼女に合っていて、どうでも良くなった。




その言葉の意味は後に知る事になる、かもしれない。

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