ka06 | ナノ


世界樹のはなし





CAST:ラピリア(テレジア),ヴィル(グラニデ)

「えーと…ヴィル君何言ってるの?そこに人なんて、いないじゃん」

「そーよ、あんたやっぱり幽霊でも見えてんじゃないの?」

「違っ…幽霊なんかじゃ、ない!」

二人の視線が辛かった。でも俺の隣に確かにいるのに。
今も、そしてこれからもずっと。




「なんでお前、他の奴には見えないんだよ」

大きな樹の下に座り込んだヴィルはふてくされたように頬杖をつきながら隣にいる彼に尋ねた。彼を見る訳でもなく、気だるそうに前を見つめる先にはさっき幽霊が見えるのか、とからかったラグランジュとメルボルンが二人で遊んでいた。ラグランジュはヴィルの双子の兄でメルボルンは姉。だが、性格もそうだが、それよりも隣にいる「彼」が見えるせいで軽蔑され、ヴィルはいつも遠くで見ているだけだった。
別に一緒に遊びたい訳じゃないがさっきみたいに馬鹿にされるのは当然嫌な訳で。なんで自分だけにしか見えないんだろう。と、苛々しながら尋ねたのだった。自分が今まで何度同じ質問をしたことか。返ってくる答えなんて、もう分かりきっていたがそれでもまた、同じ質問を今日も繰り返すのだった。

「それはお前が選ばれた者だから」

「だから何に選ばれたんだよ!ったく意味不明!もっと詳しく言えっての」

「…お前が、俺に選ばれた?」

「いやいやなんでそこで俺に聞くんだよ知らねーよ。というかお前に選ばれたのかよ。嬉しくねー…」

深い溜め息をつくとヴィルは顔を埋めた。彼、という話し相手がいる為そこまで退屈はしてないが自分にしか見えてない彼は謎が多すぎてやっぱり、溜め息しか出なかった。

「溜め息ばっかついてると幸せが逃げていくぞ」

「うっさいな!誰のせいだと思ってんだよ!そもそもラピリアなんてディセンダー、聞いた事ないんですけど。お前ほんと何者?幽霊なの?やっぱ」

「幽霊?ではないだろう。俺はちゃんと実在している」

「じゃあなんで見えないのさ!」

ラピリアと呼ばれた青年は首を傾げた。いや、だからそれはさっき言っただろう、と。いつもいつも質問がループ。ヴィルは苛立たしげに唇を噛んだ。ああ、意味が分からない!

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