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※創作BL

From: 春井朔哉
Sub : (´・ω・`)ショボーン
また彼女にフラれた〜><
欲しい物だけ買わせてさよならとかヒドいよな!(*`θ´*)
他にも聞いて欲しいこと沢山あるし、みゆみゆの話も聞きたいから明日飲みに行こo(*^▽^*)o



「…またかよ」


いつの間にか来ていたらしいメールを開くと、何故か彼女と長続きしない俺の友人、朔哉から何度目かの飲み会のお誘いがあった。俺の話も聞きたい、と言いながらいつも一方的に向こうが長々と話して、酔い潰れて俺が慰めるハメになる。


Sub : Re:(´・ω・`)ショボーン
何時に何処?



数分どころか一分足らずで直ぐに場所と時間のメールが帰ってきた。

朔哉とは高校時代からの友人だ。高校時はずっと一緒で、大学は違うがよくメールはするし、さっきも言ったが何故かよくフラれ、その度に会っている。朔哉は俺の事を「いつも話を聞いてくれる良い親友」とでも思ってるんだろう。彼には友人が多いが、その中で俺が少し特別な、親友である自負はある。
俺はと言うと、多分、彼の事を友人だと思った事は一度もない。情けない話だが、一目惚れだった。元々俺はそっち系、所謂同姓愛者という奴だったから、でも当然彼に言える訳もなく、数年経った今でも「良い親友」を装っている。自分が人と違う事には早くから気づいていたし、だからと言って何かしたい訳でもない。

俺はこの想いを伝える気は全くない。



「でね!マイちゃんが「あんたといてもつまんない、なんかうわべだけなんだもん。もう別れましょ?」とか言って!買ってやった戦利品をバッと取るとツカツカと行っちゃったわけ!酷くない?オレは真剣に!一途にマイちゃんを想ってたのに!あーもうなんなのオレどうしたら良いんだよ!!」

「さあ」

「ぐすっ、みゆみゆつべたい…」

「また合コンすれば?朔哉だったらカッコいいし直ぐに新しい彼女出来るでしょ」


「〜っみゆみゆ優しい!下げておいてかーらーのー上げる作戦!まさに飴とムチ!みゆみゆのそーいうびすまるくなとこオレすきーーぎゅー」

「なんでビスマルク…ていうか暑苦しいから離れて」


こんなの、日常茶飯事だ。朔哉の好き、は勿論友人として好きで、抱きつくのも親友だから。
軽くあしらうと朔哉は少し口を尖らせてから、ちょうどすぐ隣を歩いていた女性店員にジョッキ一杯を追加した。


「…っていうかみゆみゆ今の子可愛い!ちょっと話しかけても良いかな?」

「仕事中なんだから迷惑だと思うけど」

「でもオレの直感があの子だと言ってる!ちょっと行ってくる!」

「頑張れ」


当てにならない直感で、朔哉は席を立ちさっきの女性店員に絡みにいった。
最初、驚いて少し迷惑そうな顔を…いや、でも満更でもないようだ。

朔哉はかっこいいと思う。俺の個人的感情を引いたとしても。そんな彼に言い寄られて断った女性を今まで俺は知らない。なのに付き合ってからは合わないらしく直ぐに別れてしまうのだが。今日もまた、成功する。視線を戻し、皿にまだ残っている唐揚げを右手でそのまま掴んで一口で俺は平らげた。

なんて自分は惨めなんだろうか。彼がノーマルであることは嫌と言う程思い知って、俺では彼の隣にいることはできない。幾度と朔哉の愚痴を聞き、朔哉が女の子に絡みに行くとこをみて、朔哉の彼女とも沢山会った。その度に実感する。これでは自分の首を締めている事と何も変わらない。でも、朔哉が他の人間にこうやって愚痴を語るようなとこは見たくなかった。恋人に、隣にいられないのならせめてその位置だけはキープしておきたい。

でも、彼が本当の運命の相手に出会ったら?
そしたら俺はもう確実に用済みだ。


「みゆみゆー!彼女出来た!」


なんて考えてたら朔哉が満面の笑みでさっきの女性を連れてこちらにやってきた。どうやら本当に成功したみたいだ。女性店員は少し恥ずかしそうにはにかむと俺に小さく会釈した。こっちもつられて頭を下げる。良い女性っぽい。


「はじめまして、俺は鈴村心優です。コイツアホで少しウザいですけど良い奴なんで、宜しくお願いします」

「わ、私は北見咲です!私こそ宜しくお願いします!」

「ま、宜しくするのはオレだけどなー」

「はっ、すいません…!ええと朔哉くん宜しくお願いします!」

「この天然ガールマジ可愛い!此方こそ宜しくね!あ、咲ちゃん仕事何時までー?」

「え、と9時までです」

「じゃあもうすぐだね!待ってるよ、一緒に帰ろ?」

「はっはい!」


それから何度かお辞儀をすると、北見さんは仕事に戻っていった。少し天然というかテンパりっ子なのか。朔哉を見ると、完璧に顔がニヤけきっていた。


「いやー咲ちゃんほんと可愛いわー」

「朔哉のドストライクだよね、あの子」

「やっぱ分かるー?良いよなー!しかも早速一緒に帰れるとか!この店に今日オレが行こうと思ったのとか咲ちゃんがオレの隣りを歩いたとか運命だよな、もう!」

「はいはい。まあ大切にしてあげなよ」

「勿論!っていうかオレはいつも女の子を大切に」

「知ってるよ」

「…そうだよな!流石みゆみゆー好きだーー」

「彼女作って早々に別の奴に告るなよ。…そろそろ俺は帰るよ」

「えー一緒に帰らないの?」

「二人の邪魔はしたくないし。はい、千円」

「なんだよそれー。ってえ?千円?」

「受け取ったな、残りはお前払っといてね」

「え、ちょ、心優さん!?全然足りないんすけど!えっ、あ、咲ちゃーん私服可愛いね☆あ、心優なら今店を…ってだから待てー!」


いつも愚痴聞いてやってるんだ。たまには奢れっての。
何か言ってる朔哉をシカトして俺は早々に店を後にした。



はまだ友達のままで


朔心その1

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