短編 | ナノ


*本性(φブレ/ギャモン)





*男キャラ×男夢主

「うん…うん、そうだと思ったよ。キミが無断でサボる時はいつも其だからね。うん…」


とある日の午後。
いつの間にか毎日放課後はテラスに行くようになっていたオレは当然今日もテラスにいた。
一つは忌々しいあのバカイトに一泡噴かせるため。二つ目は、あの人に会えるから、だったけれど今日はまだ来てないようだ。
でも、軸川センパイはもういる辺りまだ授業という訳ではないのだろう。
軸川センパイに行方を聞こうにも彼はさっきから通話中だった。随分親しい相手らしい。


「良いよ、先生にはもう言ってあるから。そもそも、もう授業終わってるしね。何かいる?…はいはい、あ、そうだ」


そこで軸川センパイと目が合いギョっとする。センパイは小さく笑うと此方に近付いてきた。ん?


「折角だからキミによく効く薬でも持っていくよ。…うん、また後で。……ギャモン君」

「なんスか?」


どうやら通話は終わったらしい。携帯を閉じるとオレに声をかけてきた。…そういえばあの人無しに軸川センパイと話す事は殆どない。まあ丁度良い、あの人の居場所を聞こう。


「ナマエのお見舞いに一緒に行ってくれる気はない?」

「…え、センパイの…?」


勿論、答えはイエスだ。





「くそっ…上手くいかねえ…なんか、何が違うんだよ…!」


そう自問自答を繰り返して何度目だ。作曲は好きだが、一度気に入らない、と思ってしまうと暫く抜け出せない。
先程、ソウジから電話があり、いつの間にか翌日の、しかも午後になっていることに気付かされた。
作曲だけでなく、弾く時も、上手くいかなくなると気に入るまで、周りも気にせずずっと弾き続けるらしい。何度か倒れた事もあった。
今はソウジが気にしてくれるから無くなったが。さっきの電話でこっちに来ると言っていたから、もうすぐ到着する頃だろう。
周りを見渡すとぐしゃぐしゃになった楽譜が散らばっているが態々片付けるのも億劫だ。多分顔も酷いと思う。顔くらい洗っておくか。

学校では大分真面目優等生キャラを気取ってはいるが実際そんな性格ではない。ソウジにはバレた。だから家に来るといっても、最早何も思わない。
きっとこの姿のまま出ても溜め息はつくだろうが何も咎めはしまい。
適当に顔を洗い近くのタオルで拭く。ああ…確かにクマみたいのが出来てるなあ。
鏡とにらめっこしていると、ピンポンが鳴った。


「ナマエー僕だよ、開けて」

「分かってるよ」


五秒後、外を確認せずに開けた事を後悔する。
大欠伸をしながら開けた先に、確かにソウジはいた。いたけど、彼だけじゃなかった。


「頼んでたのは買ってきたんだよな……え?」

「ち…ちわっす……」

「ギャモン…君…」


彼、が唖然とした顔で僕を見ていた。
今の僕って、女性的に言うとスッピン状態…
開いた口が閉まらないというか思考回路がショートしたというか。

ヤバい、死にたい。


「どうせまた鬱ってると思ったから、恋人君でも連れてきたら良くなるかなあって思って」

「ソウジ…?なんなのお前わざとなの」

「なんのことだい?とりあえずお邪魔しまーす。ほらギャモン君も、衝撃的なのは分かるけど」

「…かなり散らかってるけど、折角来てくれたから、え!?」


ソウジ憎む。特に笑顔が憎たらしい。
でも、いつまでも本性を隠す訳にもいかなかったし仕方がなかった…のか……?
とりあえずキャラだけでもと、取り繕ってギャモン君にも上がるように勧めようとしたら、突然両肩を掴まれた。


「え、あのギャモン君…?」

「サイドテールセンパイマジLOVE☆1000%っス」

「…はい?」

「セ、セセセセンパイ可愛すぎてオレっ、オレは…!どうしたら!良いんスか!!」

「…取り敢えず上がる?」

「はい!!」


意外と幻滅とかされてないのか…?
よくわからない…ギャモン君は時々謎だ…。
しかしソウジニヤニヤすんな気持ち悪い。
.......................

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