*歩み始めた道の先(稲妻/ヒロト) |
*男キャラ×男夢主 「ナマエ」 聞き慣れた声がした。でも、少し懐かしい気もした。 無視しても良かったけどあれは俺が振り向くまでずっと呼び続ける。 「ああ、今日はすぐこっち向いてくれたんだね」 振り向くと、緑色の瞳が俺を見て笑っていた。 そういえば、こんな街中であれと会う事は殆ど無かった気がする。 「何の用?グラン」 「その呼び方はもう良いよ。前みたいにヒロトって呼んでよ」 「面倒くさい」 「ナマエはいつもそれだよね」 あれはもう一度笑うと俺の隣にきた。 性格は問題だが見た目はそこら辺の男よりずっと良い。多分。 彼自身は気づいてないだろうが彼のその容姿は周りの視線を惹く。 正直、今でも彼の隣は歩きたくない。もう慣れたけど。 「ナマエはこれから何処か行くの?」 「秋葉原から帰ってきたとこ」 「ああ、だからそんな袋持ってるのか。あ、オレはさ…ナマエ、少し時間ある?」 「今日のは録画予約したからないこともない」 「ほんと?じゃあ付き合ってよ」 あれについていった先は、河川敷だった。 *** 「で、何?なんか悩んでるんだろ」 河川敷のグラウンドでは、俺たちよりも小さい子供達がサッカーをしていた。 俺がそう聞くとあれは少し驚いた顔をしてから曖昧な返事をし、苦笑いをした。 …彼は一々表情が変わる。 それが、俺の前だと尚更なのは最近気付いた事だけど。 「FFIの、世界代表の選抜チーム候補に選ばれたんだ」 「それで?」 「うん、それで…オレなんかが、選ばれていいのかなって」 「なんで?」 「なんで、って。オレたちはあんな酷い事をしたのに。世界代表に選ばれていいのかな、ってこと」 「別に構わないだろ。選ばれるって事はそれだけ実力が認められてるって事だろ」 「…即答だね」 そう言われ、ハッとした。 思ったことをなんでもズバズバ言ってしまう俺のそれは欠点だ。前に誰かに言われた。 言ってから後悔する事、人に言われて初めて相手を傷付けたと気付く事。 人付き合いは面倒だから、あまり気にしていないが、今あれを傷付けるつもりはなかった。 「悪い」 「…ううん、オレはそういうキミのとこ好きだから。そっちの方がホッとするな」 「そう…。その、お前に声かけてくれたって事は、それはもう気にしてないって事じゃないの?そんな深く考える必要とか、ないと思うんだけど。それに所詮選抜チームに選ばれただけで、まだ行くと決まったわけじゃないじゃんか」 「ナマエ…」 「そんな、悩みながらプレイしたって選ばれないと思う、世界代表の選抜チームって事は強豪達が集まるんだろ?本気でやらなきゃ、お前でも勝てない。…と思う」 そこまで言って俺は深く溜め息をついた。 こんな長くは滅多に喋らない。疲れた。 少し待っても返事がないから、あれの方に顔を向けると、無駄に輝いた瞳で見ていた。 「ナマエがこんなにオレの事を思ってくれていたなんて凄く嬉しいよ!」 「どうしてそうなる」 「えへへ…ナマエありがとう。やっぱりキミに相談してよかった」 「俺は思ったことを言っただけだ」 「それが嬉しいんだよ。…オレ、本気でやるよ。で、世界代表に選ばれてみせる」 「ああ」 「あ、付き合ってくれてありがとう。ナマエも、選抜試合の時は見に来てよ。雷門中でやるって言ってたから」 「分かった」 「…あれ、オレはてっきり見たいアニメと被ってなければね、って言うと思った」 「お前が頑張ってるとこを見に行かないわけにも行かないだろ」 「ーっ、もうナマエ大好き!世界で一番愛してる!」 「俺はアニメの次の次の次の以下略くらいに好きだよ」 抱きついてきたあれを引っ剥がすとさっき貰った紙袋の安全を確認した。大丈夫だ、初期状態を維持している。 あれは暫く口を尖らせていたが俺が顔を上げると眩しいくらいの笑顔を向けた。 「気持ち悪いよ、ヒロト」 「えっちょ、ナマエ笑っ、え、今ヒロトって!もう一回!もう一回!」 「私は今日も転がりますーだが断る」 ウザいから言わないけど。 お前が世界代表に選ばれる事を、そして日本代表として勝利を獲られる事を。 俺は応援するよ、ヒロト。 ....................... ←back |