短編 | ナノ


貴方と一緒ならどこまでも(AGE/ウルフ)





「ナマエ」

「きゃっ、え、え…?」


歩いていたら、というか無重力だから歩いているわけじゃないんだけど。
通路を通っていたら突然視界が何かに覆われると同時に頭上から声がした。


「だーれだっ」

「ウルフさん、でしょう?」

「おお、当たりだよ。よく分かったなあ」

「貴方の声を間違えたりはしませんよ。それに、こんなことするのウルフさんくらいしかいないもの」

「そうか?フリットとか…いや、アイツしなさそうだなあ…」


声の正体はウルフさんだった。
彼は、私の命の恩人だ。彼が気付いてくれなかったら、彼の声がなければ、私は今頃宇宙の塵と化していた。
彼に助けられ、でももう行き場なんてなくて。そしたらじゃあ俺が面倒見てやる、と私をこの船に置いてくれた。
迷惑はかけたくなかったけど行き場がないのは事実だし、それに彼の側にいたかった。


「なあ、ナマエ。これから暇か?」
「え…あ、はい。勿論暇ですけど…」

「だよな!じゃあ到着したら行くぞ!」


ウルフさんはそう笑いながら言うと私の腕を掴んだ。
彼に、触れられるだけで胸が高鳴る。
それをバレないように、平然を装って私は聞いた。


「えっ、ど、何処にです?」

「ファーデーンだよ!お前あん時の宇宙船から出たことなかったんだろ?丁度もうすぐ今からファーデーンに到着する。俺が案内してやるよ」

「そ、そんなウルフさんに迷惑は…」

「どーせ俺も行かなきゃならねーとこがあるんだ。少し待ってもらわなきゃならないけどさ、船艦以外の場所、気になるだろ?」

「それは…その…」

「…ぷっ、あはははっ、目輝いてるじゃんか!お前は俺に遠慮なんてしなくていーんだよ。な?」

「はい…じゃあ、あの、私行きたい、です…!」

「ふふん、そうこなくっちゃな!きっと驚くと思うぜー」

「あの…ウルフさん!あ、ありがとうございます…」

「どーいたしまして。でもお礼を言うのはまだ早いと思うぜ?」


ウルフさんは一度私の頭を撫でるとそのまま腕を引っ張った。
船の外なんて未知の世界。一体どんなところなんだろうか。
でもそれ以上に私はウルフさんとお出かけ出来ることが嬉しくて。
私は笑って頷いた。

.......................

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