短編 | ナノ


君のその一言で(TOA/ガイ)





「ナマエ、買い出しに行かないか?」

彼はそう言うとニッと笑った。





「ガイ、僕で良かったの?ルークは…」

「ルークならさっきからミュウと追いかけっこしているからな。ナマエは嫌だったか?」

「そんなことないけど…」


大欠伸をしながら林檎をかじっていたら、ガイに買い出しのお誘いを受け今に至る。
別に嫌ではない。むしろ彼から誘われるのは嬉しいが、彼は女性恐怖症でしょ?
一応、僕も女なんだけど…。


「は…」

「え?どうかしたのか?」

「あ…いや、ちょっと自分の思考回路に吐き気が」


何を言っているんだ。僕は女々しいのは嫌いなんだ。
女として見てほしい、なんてバカなことを考えたにも程がある。
少なくともあんな女性らしい…まあチビもいるけど三人がいる中で僕を女としてみてほしいなんて…ああ、また。


「あ、もしかして女性恐怖症のくせになんで自分を連れていくのか、ってこと?」

「え?ち、ちが…」

「ははっ図星か」


何故かガイにはいつも嘘が見破られる。ルークやナタリアならすぐに騙せるのに。
ガイは一瞬出した手を引っ込めると何もなかったように続ける。


「オレもよくわからないんだよな。でもルークじゃなければ…って考えると一番
に思い付くんだ」

「一番に?」

「ああ。落ち着くんじゃないかな、ナマエの隣が」


そう言うとガイはまた笑った。
嬉しかったけどなんだか恥ずかしい気がして僕はぷいと顔を反らしてしまった。

キミの一言で一喜一憂する僕がいるんだ、って。



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