短編 | ナノ


独りぼっちの英雄(pkmn/コーン)





「――、さよなら」

「あ、」


呼び止めようと息を吸ったけど、貴方の名前、私は知らないから。
彼は、振り返らずに、黒の英雄に連れていかれた。

…分かってる。

私、失望されたんだって。



―――独りぼっちの英雄



「ナマエさん!」

「あ…コーン?」


名前を呼ばれ振り向くと焦った表情でこちらに向かってくる青髪の青年を見つけた。
彼、コーンは私の前にきて、膝に手を付き苦しそうに息をしている。
全速力できたのだろうか。背中をそっとさすってあげた。


「コーン、大丈夫?」

「え…あ、ああはい…いや…え、と」

「落ち着いて。ほら大きく深呼吸ーゆっくり吐いてー」

「ふぅー…コホン、大丈夫です、おさまりました」


コーンは背筋を伸ばすとそう言い小さく笑った。
さっきまで私の方が背高かったのにやっぱり今ではコーンの方が高い。
…ちょっと悔しいな。


「で、言いたいことはなに?」

「え…あ!さっきプラズマ団に絡まれてる女の子がいたって聞いて…容姿がナマエさんと同じ様だったので…」

「絡まれた…ね」


寧ろ私が絡んだんじゃないの?で、結果フラれました、って。


「も、もしかしてほんとにナマエさんが?」

「ええと…ん、まあ。でもすぐいなくなっちゃったよ」

「大丈夫ですか!?何かポケモン取られたり…あ、バトル挑まれたり」

「大丈夫だよ、コーン心配し過ぎだって。何もなかったから」

「ほんとですか?なら構いませんが…」


コーンはまだ怪訝そうな表情で見ているがでも本当に、何もなかったから。
ただ、私があの人の信頼を、…そもそも信頼してたかどうかすら知らないけど、それをなくしてしまった。

ただ、それだけ。


ごめんなさい。

ほんと、私は…





「…嘘つき」



.......................

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