短編 | ナノ


頼ってもいい?(inzm/豪炎寺)





「修ちゃん…ごめんね…」

「え…?」


練習休憩で、水を飲んでいたらナマエが本当にすまなさそうな顔でそう謝った。

…いきなりなんだ?

唖然としてると…余程アホな顔でもしてたんだろう、ナマエは小さく吹き出した。


「ふふっ…そんな惚けた顔やめてよ」

「いや…というかなんで謝られてるのか…」

「……私ね、修ちゃんがいなくなって、代わりになれないのは分かってても少しでも頑張ろうって、いつでも帰ってこれるようにって。でも…」


そこまで言って、ナマエの笑顔が消えた。
風が吹き抜ける音がする。

…しばらくの沈黙があった。


「…でも?」

「私…やっぱり修ちゃんに頼ってた。怖かった時、負けそうな時、修ちゃん助けてって、一番に思っちゃった。自分でまず頑張んなきゃいけないのにね」

「ナマエ…」

「だから、ごめんなさい。いつもいつも頼っちゃって。迷惑とか、沢山かけちゃって」

「……確かに迷惑だって思った事もあったな」


ナマエの体がビクッと震えた。
今、彼女はどんな表情をしてるんだろうか。
…考えたらなんとなくゾクゾクしたが引かれるのがオチだから黙っておこう。


「…なんてな。オレは嬉しかったけどな」


そうオレが言うと今度はナマエが間抜けな顔をした。
…ああ、確かに吹き出す気持ちも分かるかもな。
まあ面白いより可愛いの方が勝ってるけど。


「嬉しい…?どうして?」

「ナマエに頼られたからだ」

「私に?」

「…ああ。好きな奴に頼られて、嫌な気はしないだろ?」

「うん、でも……って、え!?」


ボンッと音がするとナマエは耳まで赤くなっていた。
予想外…というかこれは期待してもいいのか?


「おーい!豪炎寺、ナマエ!練習はじめるぞー!」

「「!」」


円堂の空気読んでるんだか読んでないんだかな呼びかけにオレまで硬直した。
…ったく、タイミングいいというかなんというか。


「ナマエ」

「え、あ、はい!」

「これからも、もっと頼ってくれて構わない」

「修ちゃん…」

「…後、何を勘違いしてるかしらないけど…オレはナマエだって、夕香だって、…勿論、円堂だって好きだけどな」

「えっ…あ!う、うん、そんなの知ってるよ」

「…そうだな」


なんて変な弁解してる辺り違うって事に…気付かないな、お前は。

今はまだ伝えるべきではない。
エイリアも、まだ倒してないのにオレだけがハッピーエンド、って訳にもいかないだろ?


「二人ともー?」

「今行くよ、円堂。…ナマエ、行こう」

「…うん、修ちゃん」


差し出した手を握り返すと桜は小さく笑った。
…日本や、夕香、それだけじゃない。
オレは、エイリアからの全ての脅威からナマエを守ろう。
それは頼れと言ったオレがやらなきゃいけないことだろうし、それに。

…オレも笑うと円堂達の方へ歩いていった。


.......................

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