Jeanne d`Arc | ナノ


005


「あんた達の相手、私がしてあげる」


私は斧を構えると、言った。
山賊達は、アキ達を逃がされて悔しいのだろう。すぐに武器をだした。
こういう奴らは単純思考だから扱いやすいのよ。

一対三…しかも私は子供で向こうは大人。
でも諦めたってしょうがない。
せめてこいつらからはみんなを守りたいから。


「傷つけるなとは言われてねえよなあ?おらあっ」

「当たんないわよっ、震影刃!」

「うごっ」


最初の一撃をしゃがんで避けそのまま斧を突き上げる。
その奥からきたもう一人の攻撃は少し当たったがいける、斧を振り回した。


「げふっ、や、やるな…」

「甘くみんなって言ってるでしょ、っ!?」

「ハッ、甘くみてるのはテメーじゃねーのか?」


油断した。

直にお腹に喰らい、私は吹っ飛ばされ地面に叩きつけられた。
少々砂が口に入った気がする…血の味もするけど大丈夫…だと思う。
今度は受け身をちゃんと取ろう。


「もうくたばったのか?ひゃひゃひゃっ」

「交わる…」


奴等は無視で私は詠唱をはじめる。
あんまり魔術は得意じゃないんだけど…


「おい、お前」

「っ!?ケホッ、…」

「二度も同じ手は食わねえよ」


気付いたら目の前にいた山賊リーダーに胸ぐらを掴まれ、息が苦しくなる。
相手の方が身長が高いから足が宙に浮いているけど…あと少し。


「…聞いてるのか?ああ?」

「うっ…、恐怖の…、荒…」


もう一度、私は地面に叩きつけられた。
詠唱しながら受け身なんて取れるわけがない。
全身がズキズキする、痛い。
私はこんなに弱かったのかな、悔しい。

咳き込んでたら地面に人の影が三つ映った。
…今、囲まれてる?


「もう終わりか?威勢がいいのは最初だけか。ていうか俺たちに攻撃しておいて何もなしってのもなあ」


きた!囲まれてるなら好都合よ!
掴まれた腕を振り払うと私は叫んだ。


「食らえっ、フィアフルストーム!!!」

「うわああっ」
「うげえええええっ」
「チッ、くそっ」

「ケホッ、ケホッ…決まった?」


フィアフルストームが砂をも巻き込んで正直どうなったかよくわからない。
斧をもう一度握り直すと私はその嵐をじっとみつめた。


「っらあ!!」

「!ちっ、」


砂煙から山賊の一人が突っ込んできた。
覚悟していたから若干よろける程度で済んだ。

コイツは多分一番強そうな奴…
チラリと砂煙が退いた場所をみると、残りの二人はへばっていた。

と、なると後は一人。


「嬢ちゃんのくせに中々やるなあ?まさかコイツらがやられるなんてな…」

「ハッ…そんなこと、思ってないくせに」

「…フン、バレちゃったかよ!」

「ひゃっ」


山賊は豪快に剣を振る。
後ろに退いたが若干ダメージを受けた。
けど何を今更!一撃で、決めてやる。


「剛招来!はああああっっ!!!」

「へっ、くるか…ん…?」

「っ、崩昇…襲撃!!」

「ぐあああっっ」


技が直撃し、山賊は吹き飛ばされた。
わかんないけど…勝ったの?
私は肩で息をしながら山賊が起き上がるのを待った。


「はぁはぁ…っ、ねえ」

「っ、ひぃっ、お前…なんなんだよ!なんで殺られないんだよ!」

「あんたごときに…っ、殺られるものか!どうする…続ける?」

「くそっ、金額に合わねえよ!お、覚えてろ!てめーら立て、行くぞ!」

「え?あ、あ…ひい、は、はい!」

「覚えてあげとくわけ…ないでしょ」


どうやら一向に倒れない私が怖くなったのか…山賊達は一目散に逃げていった。

終わった…?
私、少しは守れたかな?


「へへ…なら、嬉しいや…っ、でも」



ごめん、帰る力は持ってないや。

こんなところで倒れたら魔物の餌になることくらい分かってる、けど。

さっきまでどうやって立ってたんだっけ、なんで痛くなかったのかな。

全身がズキズキと痛む。


「終わりは…イヤだ、な…」


そこで、私の意識は途切れた。







- 8 -


[*前] | [次#]
モドル