小説 | ナノ

・半兵衛が病で療養してる
・三成にとって
秀吉も半兵衛も大事な存在
・とりあえず捏造

を、踏まえてどうぞ














「みつなり」

「半兵衛様」
「わざわざ来てもらって、ごめんね」

布団から起き上がって、此方を見据える。薄明かりに照らされた、その姿。笑顔があまりにも柔らかくて、泣きそうになった。いけない、こんなことじゃいけない。これじゃまるで。

ここ最近で半兵衛様は変わられた、と思う。

少し前まではこんな表情はしなかった。瞳はぎらぎらと静かな闘志に溢れていて、もっと、周囲の空気はピリピリしていた。ついこの間まで病のことなんて知らなかった。感じさせなかった。なのに。



「顔を上げなよ」
「は」
「今回の戦…活躍したんだろう?」

秀吉から聞いたよ。よくやったね。
そう言って笑う、笑う。

近頃の三成くんの活躍には目を見張る、とか。三成くんは本当によくやってくれてる、とか。黙り込む自分に対し饒舌な、嗚呼、顔がよくみえない。今、どんな顔をされているのですかどんな思いで、私は、私は、私は。



「……そう、ぼくがいなくても、大丈夫なくらい」

「そんな…!」
「間違ってないよ。…間違ってない。むしろぼくが居なくなったくらいで揺らぐ方が問題だよ。」
「半兵衛さま」

「……だから、いいんだ。きっと天下もすぐそこ、だね」
「はい。この三成、及ばずながら全力で秀吉様を…」

「うん」

言い切る前に、頭にふわりとした感触。撫でられたのだと気付くまで暫くかかり、その頃にはもう離れていた。
なんてやさしいんだろう。なんてあたたかいんだろう。出会ったころ、前線で采配を振るう彼は、きっと冷たいのだと思っていた。けれど、そうじゃなかった。自分を見るその瞳も、さりげなく労ってくれる言葉も、こうして触れる手も全部全部きちんと体温があって、どうしようもなく暖かい。だからこそ、どうして、この人が。




「ねぇ、ぼくが――。
・・・・・ううん、なんでもないや」


三成、
今日は月がきれいだから、もう少し見ていかないかい。

その言葉には静かにはい、と答えるしかなかった。もう少し、もう少しだけこの、穏やかな刹那を。








ねぇ、僕が死んだら、秀吉のことを宜しくね
(そんなこと言えない。だって僕は、まだ、)


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