「もっと自分の欲望に忠実になったら如何です」
自分に瓜二つの口元がそう動くのを見ていた。銀色の髪がゆらゆら、嗚呼、水牢にいるようだ。息苦しさに苛まれ、酸素を求めて口を開いた。文句の一つでもいってやろうか。そう思うのに、漏れるのはただゴポリと言う水音のみで、結果として私が更に苦しくなるのみだった。
欲望とは何ですか、私はただ公の為に。 頭の中でぐるぐると言いたいことが巡る。行ったり来たり、……私は何が伝えたかったのだろう。伝えてどうなるのだろう。疑問は解けるのだろうか。
「素直になってしまえば楽なのに。貴方は抵抗し続ける…強情ですねぇ」
「私は私の思うまま生きているだけです。公と私の思想は似ています。あの方の手足となれることが、私は嬉しい。」
「そうでしょうか?本当に?そうだといいですね」 「言いたいことがあるのなら、はっきり言いなさい。」
「いえ。……全ては夢幻、じゃなければ良いのですが。」
目の前の男は微笑する。それが恐ろしいより儚げで、ふと手を伸ばした。触れるのは蜃気楼のような感覚のみで、揺れる水面のように残像が、ゆらり、
「きっと貴方は直に気付く。そして私を作り出す。」
また静かに浮かび上がったその姿が振動を与えて頭に響いて、けれどまた何も言えなくなった。苦しい、痛い、嫌だ嫌だどうか気付かせないで
「………けれど、」
「私は貴方が羨ましい、ほんの少し、ね」
青白い手が此方に伸びて、頬を包む。 酷く哀しそうな、苦しそうな男は、やっぱり私と似ているのかもしれないと思った。 ただ人離れした体温だけが受け入れられずに、男が見えなくなっても身体は小刻みに動くままだった。
頬に触れ直した自らの手も、ゾッとするほど冷たい。
---------- 光光みたいな。 織田に仕えて少しのまともなみっちゃんと、魔王になっていく信さんに仕えながら狂ってしまった後のみっちゃん。なイメージ
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