小説 | ナノ

やみつひで 欝

昔からそういう対象として見られすぎたせいで諦めと嫌悪が入り交じっている。無理にされたことがトラウマ。なんて裏設定









「そう、貴方も」

あなたも、と光秀は言った。本能寺で信長を討った後のような、何もかもを諦めきった様子で。貴方も同じなのですね。そう微かな声で告げられる。時がとまったかのような錯覚がして、動くことができない。ゆっくりと身体を離されたことで行き場を無くした手が彷徨った。辛うじて光秀、と呟くと、虚ろな目がゆらりと此方を向く。その奥は何も見えない、淀んだ、黒。


「私は、友だと。」

大切な大切な友人であると信じていたのに何故何故貴方まで貴方までもが私にそういったものを求めてそのような目で見て私をそういった対象にしてただ綺麗な奇麗なきれいな関係でいることはできないのですか私は貴方を信じていたのに信頼していたのにどうして、私は私は私は



「……違う」
「何が、違うのです」
「俺はお前を」

聞きたくない、と言うように逃げようとするのを捕まえる。腕を引くとひ、と引きつったような声がして、光秀はガタガタと震えていた。

出来る限り優しく抱き止め、藻掻く身体を包み込む。いやだ、いやだと、か細い声が漏れる。それに段々と嗚咽が混じって、やがて啜り泣きになった。



「お前を、泣かせたいわけじゃ、ない」

半分は自分に言い聞かせるように、強く言う。伝われと、願った。こんなにも言葉がもどかしいことなど今まであっただろうか。


「光秀、すまなかった」

「…っ……」

「俺はただ、お前の傍で、友として居られたらそれで良い」


お前が望まないことはしない


そうきっぱりと言って、離れる。未だ流れる涙を手で拭えば、驚きの混じった相貌が見つめている。それを見て出来る限り優しく、微笑んだ。
今まで光秀がどんな視線に晒されどんな風に扱われて来たのか自分には想像もつかない、けれど。


「二度とお前を悲しませたりはしないと誓おう」


その言葉に偽りなどない。












ソクラテスの愛の形

10/11/25


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