光秀の爪を元親が塗ってあげたらいいのに、という妄想から。精一杯甘々を目指した感じ。(見ようによっては少し病んでます)
「も、とちか殿」
優しく触れる熱がもどかしい、といった様子で、光秀は身を捩る。 元親はそれを逃がすものかと抱き寄せ、朱に染まる目尻に口付けた。
ん、と声を漏らし、伏せられた、瞳。震える睫毛がたまらなく愛しい。堪え切れず瞼にも口付けを落とせば、ぴくり、身体も震わせて、光秀はゆっくりと目を開ける。
「ぁ…」 「光秀」
指と指を絡ませ、元親は自分の口元へ引く。流れる様な動作で手を取り指先にも口付けた。恥ずかしそうに寄せられる眉と僅かに潤む瞳が、まるで情事のそれのようで少し欲が煽られる。
白い手。 綺麗な指先には鮮やかな紫と、薬指にだけ深い青、が。 そこに目線を落とし、満足そうに笑みを浮かべた。ああ、愛しい。俺の、俺の光秀。
「元親、殿…」 「綺麗だ、光秀…」 「そ、んな」 「恥じらうお前は、かわいい」
そう言って、また触れる。 指の一本一本を余す事なく堪能し、愛でる。 元親が丁寧に整え染め上げた爪は艶やかだ。手を取り、真剣に塗っていく姿は、光秀が思わず見惚れるほどに秀麗だった。一瞬後、目を逸らしてしまう程に色めかしくも。一呼吸置いた際、此方を見つめる相貌は、熱が籠もりながらも優しい。その瞳に捕われたまま逃げられない。魅入ってしまう。――今も、そうだ。恥ずかしくて堪らないのに、逃れられないまま。光秀は元親の視線の中にいた。
「次は足にもするか」 「…貴方のしたいように、なさってください」 「本当に?」
そう問い返す元親は少し子供のようで、光秀は微笑み、「ええ、貴方が望むのなら。」と応える。暫し伺うようにじ、と光秀を見つめて、納得したのか元親も笑った。光秀の性格上、嫌だと言えず無理をしているのではないかと思ったが、杞憂だったらしい。ならば、
「髪も、きれいに結ってやろう」 「…はい。お願いします」 「ふふ、楽しみだ」
そう言いながら、光秀の髪を、くるくると弄ぶ。さらり、流れていく髪は指に心地良い。その手を滑らせ、陶器のような肌に触れる。頬を撫で、そのまま唇をなぞれば、惑うような吐息が聞こえた。
「ん、…ん、…」
柔らかい感触に吸い寄せられるように、口付けを落とす。
「はぁ……ふ、ン…っ…」
最初触れるだけだったそれは、段々と深さを増していった。遠慮がちに開かれた唇に舌を差し込めば、おずおずとした動作で光秀も舌を絡ませる。小さく漏れる声や熱い咥内が、元親に熱を灯していく。全て味わいたい。余すことなく、ぜんぶ。その想いのままに、息が上がるまで口腔を探った。
「…っ……ぅ、…はぁ……も、…ちか、どの……」 「全く、お前は…」 「ふ…っ…?…なん、ですか」 「……いや」
言いながら、堪らず強く抱きしめる。 紅潮した頬、荒い息、潤んだ目に伺うようなその表情。無防備にさらされるそれらを自覚していないのだから恐ろしい。
「愛している」
戸惑った瞳を向ける光秀に身を寄せて囁いた。 驚いて身を捩るのを捕まえて、ゆっくりと床に倒していく。え、あの、と抗議する唇。それには微笑んでから、もう一度口付けて、塞いだ。
「可愛い、俺の、光秀」
我が愛しのカメリアに捧ぐ (もっともっと染まれば良い)
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