02
「じゃ、行ってきます!」
梗亜は仕事で、まだ遅くなるようだからと24日の夕方、俺は早めに準備して、家を出ようとした。
本家にる人たちに声をかけて、出ていこうとすると…。
「ぁ、いてっ!」
「どこに行くんだ?」
扉を開けた瞬間だ。確かに扉を開けたはずなのに、もう一つ扉が!!!
誰かと思って上を見れば、梗亜さん…。
「え、…どこって……ど、どこかなぁ〜…」
誰にも出かける内容を言っていなかった分、ドキリッとした。
目が泳いでしまう。
「買い物か?」
「ぇ…あ!うん!そう、買い物!」
そうだ!笑ってみよう!と笑ったが、嫌に顔が引きつっているのを感じる…。
「そうか、じゃぁ俺も付き合おう」
「へ…?」
「ただの買い物だろ、俺が行ったら不味いのか?」
ニヤニヤ笑う梗亜の顔を見れば、バレてる!!とわかり、苦々しくなった。
「一人でいくの!……っあああ!もう!ちょっと!」
一人で行く!と言った俺の言葉を無視して、梗亜は俺を抱き上げるとくるりと方向転換し、帰ってくるのに乗っていた車に戻り乗り込んだ。
ばたばた、暴れたが、さほどの抵抗にはならず。梗亜は店の名前を告げる。
ギョッとした。俺が友達と約束した店だ!!
「もーなんでさー!!別にクリスマスくらい、お泊りで友達と遊んでもいっしょや!」
「ほー、泊まりで遊ぶのか」
「!!」
しまった!と思っても、もう遅い。買い物だと言ったのに、全てばらけた。
「ばかー!!」
もう幼稚な悪口しか出てこない。わっと俯いて落ち込んでいると、梗亜の溜息が聞こえる。
「8時までだ」
「ふぇ…?」
「8時には迎えに行く。それと、後ろに何人かつけるが、気にするな」
「…い、いいの?」
「あぁ…8時までな」
苦笑して、俺の髪をさらさらと撫でる。
「来年は断れよ」
優しく穏やかで、はじめから俺を店まで送ってくれるだけだったようだ。
でも、これってズルくない?
この数分後、店に付く前に俺は携帯で友達に電話した。
「ごめん、俺、やっぱり行けない」
『え?どうしたの?』
「恋人と過ごすからさ…。ホント、誘ってくれたのに、ごめんねっ」
『マジで!!いたの!?…あーいや…そっか、わかった。いいよ!楽しめよ!!』
笑って許してくれる友達がいて本当に良かった。
昔とはまるっきり違う土地で、もう一度やり直した俺は、確かに友達も大切だけど、やっぱり隣の奴が一等大切なんだよね。
「いいのか?」
「いーの!クリスマスって、やっぱり好きな人と過ごしたいかなって…おも、んッ…っ…」
言い終わる前に、梗亜からキスをいただいた…。言い終わってからにしてください!
「俺もだ」
「……」
かっこよく笑った梗亜にはやっぱり敵わないなぁと思いつつ…。
いや…あれ…。俺たちケンカしてなかったっけ!?
行先を変更した車から、クリスマスのイルミネーションが鮮やかに窓ガラスを通り抜け、俺の瞳に入った。
きっとこれがあまりに綺麗だから、ケンカなんてものを忘れてしまったんだと思う。
「プレゼントくれよ、サンタさん」
「プ、プレゼント…って…?」
わざとらしく言って、俺にもう一度キスをする梗亜は…ほんと…上手いなぁと思う。だってプレゼントってどうせ俺とか言うんだろ!!!
「お前」
ほらなああああ!!!
「ほんと…ケダモノ…」
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たっぷり抱かれたクリスマスの夜の次の朝。
梗亜の手作りご飯が出てきたときは、心底驚いて、尚且つ美味くて。さらにドキドキと、…もう一度恋に落ちた様な物だ。これを人は惚れ直したと…。
「惚れ直したか?」
まさに!とドキリッとして、顔が真っ赤になる。
やっぱ、好きだなぁ。
「うんっ」
俺はいっぱいいっぱい笑って、返事をした。はずむような声で。
梗亜も笑顔で、飽きることなく俺の頭をなでたりしていた。いつもの行為の様で、クリスマスだからか。
いつもより、幸せな行為に感じた。
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終
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