短編 | ナノ


おまけ

「たまには外へ散歩に行きたいなぁ…」

将の一言で、右京はもっていたお手玉をすべて落とした。

「…っ…しょぉおおぉ!!なんで!?外なんて楽しくないヨ!」

右京は半泣きになりながら将に抱きつく。

「なんでダメなんだ?」

「ダメだよ!危険だよ!お化けや妖怪がいっぱいなんだヨ!!」

平気で嘘をつく右京を将は軽く殴った。

「うそつけ」

「いたぁ!」

右京は頭を押さえて、頬を脹らませる。

将を大事に思う一心だというのは、わかっているのだが…。

将はどうしても外へ行きたかった。

別に逃げるわけではない。右京のことは好きだし離れたくない。

少しでいいのだ。

本殿の裏から離れた大きな木に、啄木鳥が巣をつくっている。

将は、それをもう少し近くで見たいだけだった。

「ほんの少しでいいんだ、右京にも見せたいし…」

言って顔を赤くする。

「…将」

よしっ!と右京は笑顔で立ち上がり、将をお姫様抱っこした。

「どこに行きたいノ?」

「裏の少し離れた、大きな木」

あぁ、あの木カ。右京はすぐにわかった。

将は最近、一人の時、縁側でその木を眺めている。

右京はその様子をこの前こっそり見たことがあった。


縁側に座り、自分の足を見つめ、足の指を動かす。

しばらく繰り返して、縁側から静かに降りた将。

足の指は動くのに足首は力なく曲がり、すぐに転んでしまった。

少しして、膝立ちで立ち上がり、縁側に登る。

また座り直し、大きな木を見つめていた。


それ以来、右京はなんだなんだとハラハラしていたのだったが、木の近くまで行ってようやくわかった。

将はこれが見たかったんダ。

ちょうど啄木鳥が、巣の中の雛に餌をあげているところで、ピィピィ鳴く姿が本当に愛らしい。

2人はしばらく見てから本殿へ戻り、将はお礼に右京にキスをした。

右京もお返しにキスをして、2人は縁側で大きな木を眺めていた。


prev / next

[ back ]



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -