「選抜メンバーこれで…以上や」


部室での白石の声だけがやけに頭に響いた気がした。…選ばれへんかった。選抜メンバーに。全国大会行ったレギュラーはほとんど選ばれとって、今はなんか悲しいとか悔しいとかそんな感情すらわいてこんかった。なんで…俺が…。まだ信じられんくて目の前がふわふわした感覚になった。


「ユウジ、ごめんな」
「なんで白石が謝まんねん」
「だってお前…」
「はぁ?俺がこんなことでくよくよ男に見えるか?合宿行って他の奴らぎゃふんと言わしてこいや、あと小春に変な虫寄ってこんようにしっかり見張っとけよ!」
「あぁ、まかせとき」
「いまから選抜メンバーはミーティングやろ?俺は先帰るから…ほなな」


白石にそれだけ言い残して部室を出た。一人になった瞬間急に悔しい気持ちに教われて鼻がツーンってなったんが分かった。…泣いたらアカン、泣いたらアカン。頭の中で呪文のように言い聞かせたけど、無理やった。


「……はっ、俺めっちゃださいわ」


堪えきれず目に溜まった涙が一筋顔に流れた瞬間やった。

「ユウジせんぱい」

うつ向く俺の背後から聞き覚えがある声のほうえ振りかえると、いつも部活で見る生意気な後輩が立っていた。…最悪や。こんな姿。しかもよりによって1番タチの悪そうな奴に見られたわ。なに言われるか分からん。


「せんぱいほんまアホやわ」

ほらな、予想的中や。慰めの言葉どころか弱っとる俺に容赦ない言葉をあびせよったでこの後輩。こいつほんましばきたい。

「なにしにきてん、お前ミーティングあるんやろ戻」

れや。―って言い終わる前だった、いきなり温かい感じに包まれた。頭が追いつかないなかやっと抱きしめられてることに気がついた。誰に?…あの財前光くんに。

「こうしたら、泣いてるん周りから分からへんでしょ?」

って俺を腕に納めて、普段からは想像できないような優しい声で言われた。おまけに頭を撫でられて「泣いてええんすよ」って言われた瞬間、俺の中で何かが切れて、溜まっていたものが目から溢れ出した。


「っ……俺…選ばれへんかったっ…!」

「はい」

「そんで、おれっ…っは…」

「ゆっくりでいいですから」

「めっちゃ悔し…っくて、!」

「…」


「っみんなと合宿…行きたかったっ!」ってアホみたいに泣いた。財前の制服が俺の涙でじわじわ濡れていくのが分かる。みっともないって分かってる。でも押さえきれへんかった。
白石から選抜メンバー発表されたとき、正直あの場から逃げ出したかった。レギュラーなのにカッコ悪いって思った。でもそれはただ俺の日頃の努力が足りんかったからって自分に言い聞かせた。まぁ、そのとおりなんやけどな。

「せんぱい」

「ん」

「俺、合宿行かへんのですよ」

「…は?だってお前選ばれとったやろ」

「断りました」

「ちょ、認められたんやで!?なんでそんなもったいないことすんねんっ!」

「めんどくさいんで」

「はぁ!?お前ふざけとんのかっ!」

「ふざけてません、なにより…」





「―…先輩とおりたいから、」って言われた瞬間、俺は小春意外にトキメキを感じてしまった。



「小春先輩よりも夢中にさせたります」


って、予想外すぎる冗談か本気か分からへん台詞言われて、キャラちゃうやんと思いながらも、俺は「はっ、やれるもんならやってみぃ」って、ぶっきらぼうに答えた。

「ほな、覚悟してくださいね」

意地悪な後輩はむかつくくらい余裕な顔で答えよった。

「さて、みんなのとこ戻りましょか」

って言って俺の手を引いた光がこりゃまたむかつくくらいかっこよく見えた。

「…覚悟…できとるかもな…」

「ん?なんか言いました?」

「なんでもないわ」

「あっそ」


可愛くない後輩に惚れるまで、そう遠くないかもな。と心で呟いて財前の手を握り返した。みんなのとこ戻ったら笑顔で「頑張ってこい!」って言うたるんや。

可愛くない後輩のおかげで合宿居残りも悪くないって思えたから。










・あとがき

ユウジが合宿メンバーに居ないと知ったときは私まで悲しくなりました(´・_・`)
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