より事実を知る者は言うだろう。全ては定められていたのだと。

 楽園を追われたものは何処へ行くのか。また目を背けたくなる現実から追われた者が見た其処は楽園と成り得るのか。その答えを出すのは聖者にも生者にも難しい。死者は語らず、当人のみぞ知る。
 久しぶりだった、忍ぶことなく空の下を歩むというのは。一つも違いないようでいてやはり何処かが違う空の下、記憶に殆ど無い煉瓦畳の通りをナマエはふらふらと歩いていた。その歩みは心許無く、足取りは行く先を知らぬようで数歩進んでは止まって左右を伺い、また歩み出すを繰り返している。辿り着くべき場所がどの方向、どれくらいの距離に在るのかなんて彼女には分からなかった。それでも彼女には辿り着く場所が有り、またそれが此処に在るというのも分かっていた。それがどうしてかは分からなかったが。
 そして彼女のそれは確信となり事実となる。
「私は独りじゃ生きられない」
 彼女の舌は嘘を吐かず淡々と事実を零す。ナマエの少しばかり吊り上がった目尻、それでも彼女は確かに笑みを浮かべていた。自身の手で死を手繰り寄せた彼女の瞳へと映った彼等は困ったような笑みを浮かべた。
「だって、ソルベとジェラートが私の全てで世界だもの」
 只一つの事実。彼女は彼等を愛していたし、彼等もまた彼女を愛していた。揺ぎ無い事実がそこに在った。

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