べったりと、別離は恋人のように寄り添っているものだ。その日を運命と呼べばいいのか、それとも運命の日は疾うにやって来ていたのか。箱庭の中に住まう彼女にもその時は訪れる。

 連絡が途絶え、消息が分からなくなってから捜していた者が見つかった場所は予想だにせぬ場所であった。行方を暗ましていた者はソルベとジェラート、初めに見つかったのはジェラート。発見者はホルマジオ。その場所は彼等が日々を過ごすのに二番目に頻度が高い、何の変哲も無い二人のアパート。事実がここまでであったなら、現実は非情であるなどといえない。
 ホルマジオは胸に渦巻くものとは裏腹、酷く冷静に番号を押しリゾットへと連絡を取っていた。
「……二人のアパートだ。……いや、ジェラート一人だ。……あぁ、――ジェラート一人の、死体だ」
 事実、事実を伝える彼はまたその事実を自身の胸中でも呟いていた。ジェラートという自身らも力量を良く知った人物が、個々の空間で死体となった体を晒しているという、事実。彼を殺した――直接手を下した者ではなく、彼が死ぬに至った人物。即ち、組織の頭――の奥底見えぬ力。自身らには一片も見えぬというに、相手は此方のことを何所まで把握しているというのか。
「あぁ、……ソルベを捜そう」
 電話口へと重苦しい言葉を呟くホルマジオ。またジェラートの死をホルマジオより知らされたリゾットは、目を伏せてその後事実をチームメンバー等に伝えたがナマエには伝えず、またその事実を彼女に伝えぬように言い添えた。顔色を曇らせたままにその意に沿う意思を見せる面持ち彼等へと視線をやったリゾットはその唇で言う。
「ソルベを捜そう」
 継続して行方を捜すこととなった人物、彼もまた非情な現実の元に在った。存在していたというには、不完全ではあったが。
 彼、ソルベが見つかったのはジェラートを発見してから数日経ってのことであった。それも最初は彼であると、いや、それが何であるかだなんてそこにいたものには分からなかった。郵便小包、奇妙で理解し難いそれ。一つ二つと届き、三つ目から合間を置かぬほどに届けられたそれは全部で三十六つ。それが何であるかだなんて、途中で気付いて、解ってしまった。それでも、解りたくはなかった。それが何であるかではなく誰であるかだなんて。輪切りの、ソルベ。
 悲鳴を上げるようにその事実を口にしながら慄いたのはペッシで、階段の上り口の所に立ってただ事実を目下に置いているナマエの存在に初めに気付いたのはイルーゾォ。続くように彼女に視線をやったギアッチョはペッシがジェラートの事実まで口にしたのをその鼓膜で捉えた。
 彼等は聞いた、ソルベとジェラートの死を知った彼女の歪な笑い声を。

 事実、ソルベとジェラートは死んだ。二人の死体は揃って同じ場所へと埋められた。これはその翌日の、事実。
 ナマエの部屋、正しくはソルベとジェラートの部屋だったが、兎に角彼女が身を置いている部屋へと足を向けたのはペッシだった。彼はソルベとジェラートがいなくなった今、ナマエはこの先どうするのだろうかという疑問と二人の死に対しての重みを胸中へと抱え込みながらその扉を開いた。何時かに嗅いだ甘い香り。空気の動き、感じた風にどうやら窓が開いていること知る。俯き顔で開けたその扉、室内へと視線を上げた彼は絶句した。
 ぶらりと揺れる彼女の四肢は白い。青白い。その事実を視界に納めたペッシは口元を押さえて踵を返した。ナマエ、彼女の死を目の当たりにしそればかりであった彼には、彼の視界の端、ひらりと舞った紙には何が書かれているのか分からない。
 事実、ソルベとジェラート、ナマエは死んだ。そこに確かに在ったものとは。

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