「ベルトルトは大きいね、見上げる首が痛くなるよ」
 備品を置いている倉庫の整理を当番であるためにベルトルトと励んでいる私は、私には背が届かない高い所にある必要な備品を見上げてからその身長の高さへと振り返った。
 私の言葉に僅かにきょとんとして数秒に私が向けた視線の先を見てあぁそうかと彼の足が踏み出す。一歩横に寄った私の隣でベルトルトがその棚にある箱へと腕を伸ばす。それを見ているとやはり彼は心底背が高いなと思い私は自身の首筋を撫でた。隣を見上げては急角度なのだ。
「ナマエは、小さいね」
 ベルトルトが取った箱を差し出し、私はそれを受け取る。大きくもないそれは重くも無い。ただそれがあった位置だけが問題だったのだ。
「ひどいな気にしてるのに。別に同期で一番小さくはないよ」
 受け取った箱を近くの台の上に置いて、整理も終いだなと両の手で服を払っていたら視線を感じて振り返った。ベルトルトは少しだけ言い辛そうにしてからそれでも彼にしては珍しく言葉を続けて紡いだ。
「……それでも、僕にしたら小さいよ」
「はいはい小さいですよ」
 人のコンプレックスをやたら突いてくるなと彼へと詰め寄って正面からそのやたらに高い背を見上げる。自身の頭頂部から手を払って私の身長辺りのベルトルトの体へと攻撃をした。摂取している栄養は同じようなもんなのに何をどうしてこうまで成長度合いが違うのか。これが男女の差かと、どう考えても違うだろうなと溜息混じりに首を振った。
「こんだけ小さかったかったらベルトルトさんにキスするにはどうしたら良いか分からないや」
「え?……え」
 振った首で見上げて驚き見開かれているその眼を見る。ベルトルトの目は綺麗だけれど、ずいぶんと距離がある。
「どうすればいいと思う?」
「え?」
「私はベルトルトがしゃがめば良いと思う」
「……それはしゃがめということ?」
「うん」
 多分彼は迷っている。戸惑いの表情を浮かべながらもこの距離でも分かるその頬の赤さ。そして彼がしゃがんだ為に距離が縮まった。
「ベルトルトの目は綺麗だねえ」
「そんなことはないと思うけど……っ」
 少しだけ伸ばした腕、指先でベルトルトの目のほんの少し下の肌に触れた。反射的に閉じられた彼の瞼に、私は眼孔に沿った窪みを指の腹で撫でる。その下へと滑らせて頬の肌へも触れる。
「まるで女の子みたいにすべすべだ」
 しっかりと目を閉じているそれに合わせるように引き結ばれた唇に、不意を付けとばかりに自分のものを押し付けた。ベルトルトの肩が跳ねた。
「うん、唇は男の子のそれだね。誰かとキスしたのは初めてだけど」
 なんだか恥ずかしいやと両の手を彼の頬へと沿えるようにして笑っていたら恐る恐ると瞼を開けたベルトルトの視線と私のものがぶつかった。
「ねえベルトルトからキスしてもらうにはどうすればいいと思う?」
「……そのまま目をつぶればいいと思う」
 そう言うならと目を閉じて待ったら確かに先程触れた感触が今度はあちらから押し付けられた。
「ねえナマエ、君のことが好きでたまらなくなってたのにどうすればいいの」
「好きにしたら良いと思うよ」
 私は閉ざした瞼の下で期待に胸を膨らませた。
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