「ええと・・・」

これは学生時代から花子が良く言う口癖のうちの一つだった。彼女は非常に独り言が多かったのだが、その独り言が始まる前に必ず「ええと・・・」がつく。それは助教授としてこのホグワーツにいる今になっても続いていたようだ。今は学生時代ほど一緒にいる時間が少ないので気が付かなかったが、わざわざ我輩の部屋に来て一枚の紙と睨めっこしている花子を眺めていた時に気が付いた。こんな些細な事を、と言われるかも知れないが、彼女のそれは耳にタコが出来そうなくらい聞いてきたので正直少し過敏(悪く言えば耳障り)になってしまっているので致し方ないことだと思う。

「ええと・・・ここが2で、ここはもう旗を立ててるからあと1個か・・・ん、こことここが空くな・・・」

・・・・・・しかし、わざわざ我輩の部屋に来てまで一体何をしているのだこの女は。

「何って、スリザリンの生徒から没・・・、・・・譲り受けたマインスイーパというゲームを試しているのよ」

読心術か開心術でも使ったのかと花子を凝視すれば、「顔に書いてあったわ」と白々しく言われた。・・・・・・しかし、少し気になる事を言ったぞこの女。

「今、没収と言い掛けたのかね」

「いいえスネイプ。私はいたいけな生徒から没収なんてしないわ。あの子達、このゲームを『マグル殺し』と呼んでいたけれど、これがマグルのゲームを魔法族向けにしたものだって事は知らなかったみたいね。得意げに「先生、これがなんだか知ってますか?マグルが仕掛けた罠を回避して逆にマグルにお返ししてやるっていうゲームなんです」って教えてくれたから本当のことを教えてあげたらあの子達、怒って私に杖を向けてきてね・・・」

思い出しているのか遠い目をしている花子に少し焦燥感を覚えた。「まさか何かしたのか・・・」思わず口に出てしまっていた。「まさか」花子はニコリと笑ってまたゲームを再開した。

「少しの減点といくつかの呪文を教えてあげただけよ。・・・あ、私としたことが!対抗術を教えるのを忘れていたわ」

クツクツと笑いを堪えきれなくなったらしい花子に我輩は頭を抱えた。「花子・・・我輩に用が無いのならもう帰ってくれないか」
「君がいたら我輩は頭痛に取り殺されるかもしれん」そう続けると、花子は杖を仕舞って立ち上がった。「そうね。もう用事は済んだことだし、帰ることにするわ」
花子が出て行った扉を見て、また溜息が出た。
なんともなしにテーブルに近付くと、そこには先ほどまで彼女が手にしていた紙切れが1枚。紙の横にキラキラと銀色に輝く文字で『もう飽きちゃったしスネイプにあげる』と書かれていた。人の部屋のテーブルに落書きなぞしおって・・・・・・!
勢い誤って「エバネスコ!」したらテーブルが消えた。
ひらりと落ちる紙に殺意が芽生えた。

苛立ちをどこかにぶつけたくて、我輩は扉を開けて外に出る。あいつの所為でテーブルは消えるし作業にも集中出来なくなったし、それにあいつ、我輩に尻拭いをしろと言いに来ただけじゃないか!
アフターケアにも行かなければならないし・・・丁度良く目の前をグリフィンドール生(それがハリー・ポッターであれば尚良い)が通りかからないものか。そうしたらいびり倒して減点でもしてやるのに。
そう息巻いたセブルス・スネイプだったのだけれど、彼の部屋から例の生徒たちがいると思われるスリザリン寮付近の間には当然のごとくグリフィンドール生ましてやハリー・ポッターなんて居る筈も無く、彼は発散し損ねた怒りを仕舞いこむ羽目になったのだった。


ちなみに後日花子にテーブルを弁償させたのだが、ふざけたロリータチックなテーブルが部屋に届いたときのスネイプの表情は筆舌に尽くし難いものだったという。

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