「グズマくん。今日は公園に行こうか。ポケモン達ものびのび走り回りたいだろうし」

オレがこの家に住み着き始めて数日。どうやら仕事は休みらしい花子がそう言って食後のロズレイティーを差し出した。
花子の言葉に裏の意味は捕らえられない。特にする事も無いオレはもちろん快諾すると、食器を片付けるためにキッチンに向かった。



体調管理などで毎日ポケモン達と接してきてはいるが、こうして広いところで遊ぶのは本当に久しぶりだった。
数日前までは心配そうにオレの顔を覗き込んでいたグソクムシャだったが、もうその表情は残っておらず、穏やかな顔をしていた。沢山心配をかけてしまったお詫びとばかりに、思いっきり遊ぶ。バスケットボールをパスしあったり、取り合ったり、じゃれた。
久しぶりに緊張が解けたようで、ポケモン達の顔はいつにも増して嬉しそうだった。こうして彼らの顔を眺めていると、自分は愛されているのだと実感する。
ふと、花子の方を見てみると、彼女もまたゴムボールでポケモン達と遊ぼうとしていた所だった。「これをどうしようか?…投げる?それとも跳ね返す?」悪戯っぽく笑った花子に目を奪われた。感情の起伏が乏しいのだと思っていたけれど、実はそうではなかったのだ。自分はまだ、彼女の懐どころか、隣にも並べては居ないのだ。
花子と相対するポケモン達はキラキラとした期待の表情に輝いている。彼女もまた、ポケモン達に愛されている。
あっ、と思う前に、花子のポケモン達が我慢しきれなくなったようで彼女に飛び掛って行った。花子のポケモン達はお世辞にも小さいとは言えない。初めは何とか堪えていた花子だったが、もう無理、とばかりにゆっくりと倒れて行く。

「……っと、」

無意識のうちに体が動いていた。
自分よりも細い体を軽く受け止めて、「大丈夫かよ」と呟く。
上を見上げた花子は、呆気に取られた様子で瞳を揺らした。「だ…大丈夫よ。ありがとうグズマくん…」花子は本来冷静な性格なようだが、こうした突然の出来事には弱いらしい。明らかな動揺を隠しきれていなくて、逆に面食らった。暫く花子と暮らしてわかったことがある。彼女は思っていたよりも表情が豊かだ。1日経つ度に新しい表情を見つけられる。
花子はすぐにいつもの顔に戻って、こちらに向かって手を伸ばしてきた。そのまま後頭部に手を添え、自身も背伸びしながらオレの頭を引き寄せる。こ、これは…!
甘い想像にドキリとしていると、目一杯までオレに顔を寄せた花子は想像とは違い、囁いた。「…グズマくんのえっち」言われた言葉が耳から零れ落ちて行くようだ。頭に入ってこない。ふと、花子を抱きとめた時に回した腕が目に入り、その腕が程よく花子の胸を圧迫している事に気が付き、思わず弾かれたように手を離してしまった。
途端、不自然な格好を取っていた花子の体制が崩れる。驚きに見開かれた目。
花子は自分の体の勢いを止める事も出来ずに、俺の胸に正面から飛び込んできたのだった。
その時の彼女の表情は一生網膜に焼き付いて離れないだろう。





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