自分達の朝食の後、オレたちはポケモン達の朝食タイムを設けた。
フーズを与えて、身だしなみを整えて、健康状態をチェックする。
昨夜はポケモンを回復してくれたと言っていたが、皆すっかり元気になっていた。
見事なものだ。これはきっと全て花子のラッキーによる治療なのだろう。たった一体で、しかも短時間で全てのポケモンをここまで回復させるとは。
ふと、向けられた視線に気が付いて振り返る。ブラッシングの手を止めていた花子がオレを見ていた。くすりと僅かに笑んだ花子は「グズマくんのポケモンは良く育てられているね」と言った。本心からの言葉のようだった。オレよりも何倍も良く育てられている花子に、自分のポケモンを褒めてもらえるのは喜ばしい事だ。だが素直じゃないオレは「このオレ様が育てたんだ。当然だろ」と強がった。

「あー…けどよ、あんたのポケモンも強いよな」

褒めるつもりは無かったが、これも一つの会話のきっかけというやつだ。目を逸らして頬をかきながら、オレは呟いた。「なかなか楽しませてもらったぜ」殆どコールド負けと言っても過言ではなかったが、楽しかったのは事実だった。圧倒的な力の前に倒れるしかなかったのはある意味トラウマものだったが、高い壁を見上げて、自分の小ささと弱さを思い知ったものだった。自分達は、まだこんなに強い人にも勝てる可能性があるのだと。そこに希望を見出していた。

「私もよ。楽しかった」

本心から笑む花子の笑顔は眩しい。仕掛けてきたのは向こうなのだから、少なくとも自分とのバトルを心待ちにしてくれていたのは本当なのだろう。

「なあ、やっぱりあんたにも師匠ってやつがいるのか?」

ふと、その強さの秘訣が気になった。
強いトレーナーには師匠がいるのが大体のつきものだ。
「師匠?」考える素振りを見せる花子に、オレは息を飲んだ。「そうね…戦った全てのトレーナーが師匠かしらね。教わった事がいっぱいあったもの」

「……そうか」

誰かに何かを教えてもらえるという事は、本当はものすごく大事な事だったんだと思った。昔の自分はそれをないがしろにしてきた。
花子は、自ら師として仰ぐ人間をつけるのではなく、自分から進んでいろんなことを覚え、学習し、学んできたのだろう。花子は所謂天才肌だった。
自分が壊す事しか出来なかった頃、この女は日々努力してきたのだった。その差がありありと出てしまった今回のバトルを胸に、もう一度鍛えなおす必要があるのだと決心した。





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