グズマを宥めるのは結構な骨だと思っていたのだが、案外そうでもないらしかった。
朝食を食べ終わったグズマは、ボールからポケモン達を出してフーズを与え始めた。フーズを食べ終わった順に身だしなみを整えてやって、健康状態をチェックすると、次のポケモンの世話をする。それを繰り返していた。
正直もっとやさぐれているかと思っていたのだけど。
私がグズマを拉致した日、間違いなく彼は腐っていたのだ。あの状態を見る限りだとポケモン達への配慮は一切無かっただろうにと思ったが、今のグズマを見る限りだとそんな事は無かったのだとわかる。彼は腐っていてもポケモン達への愛情だけは心に残していたのだった。
ポケモンへのブラッシングをしていた私の手が止まっている事に気が付いたグズマは、そこで初めて私に視線を寄越す。「何だよ」とでも言いたげな表情ではあるが口に出さない辺り私に遠慮しているのだろうと思った。ただ単に眉を潜めて頭の上にクエスチョンマークを浮かべているだけの可愛いグズマに一つ笑みを返して、「グズマくんのポケモンは良く育てられているね」と何でもないように言ってみた。ポケモンを褒められたのが素直に嬉しかったのか、グズマは「このオレ様が育てたんだ。当然だろ」とぶっきらぼうに言って見せるが笑みを隠しきれていない。何だよ可愛いかよ。

「あー…けどよ、あんたのポケモンも強いよな」

目を逸らして頬をかきながらグズマはそう呟いた。あの時のバトルの事を言っているのだ。

「なかなか楽しませてもらったぜ」

ボロボロに負けたくせによく言うわ。そんな可愛くない言葉を飲み込んで「私もよ。楽しかった」と返した。楽しかったのは本当だ。何せ心待ちにしていたグズマとのバトルだ。楽しくないわけがない。

「なあ、やっぱりあんたにも師匠ってやつがいるのか?」

「師匠?そうね…戦った全てのトレーナーが師匠かしらね。教わった事がいっぱいあったもの」

そう答えると、暫くグズマは黙り込んでたっぷり間を開けてから「……そうか」と呟いた。
なるほど思う所があるわけだ。何があったか知らないが、師匠についてやっていきたいのならば私はそれを後押ししなければならない。
それならば私はもう一度彼を完膚なきまでに叩きのめさなければならないのだろう。
私に勝ちたいと、グズマがそう思えるようなバトルをしなければならないのだろう。
その想いが彼の原動力になれば良いと思った。





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