「おや、これは私宛の手紙じゃないね。花子、あなたの手紙が私のところに混ざっていたわ」

「本当?ありがとう、おばさん」

朝食の席で隣に座っていたポモーナおばさんが私に手紙を一通差し出してきた。お礼を言って受け取ったけれど、宛名しか書いておらず、差出人は誰なのかわからなかった。「あら?差出人不明の手紙か・・・怪しーわねー」

「花子、面白そうに言っているように聞こえるわよ」

「そう?それは失礼」

たしなめるポモーナおばさんに舌を出して笑いかけると、ポモーナは肩をすくめて溜息を吐いた。やれやれ、あなたって子は薬草学以外は本当に成長しないわねといいたそうな顔だ。なによ、私だって良い年した大人なのよと無言のやり取りをしていると、ミネルバが「封筒の調子が悪かったのかもしれませんね」と見当違いな事を言った。

朝食の後、私は職員室で先ほどの手紙と睨めっこしていた。

「花子・スプラウトはあの手紙を視線だけでどうにかするおつもりですかな」「いいえセブルス。差出人不明の手紙なのよ」背後でスネイプとポモーナが会話をしているのがわかったけど全力で無視をする。別に視線だけでどうにかするつもりはないし、手ではどうにも出来ないから少し考えているだけだった。なんせ、この封筒は普通に開けようとすると『きゃー破廉恥!』という文字で封を硬く閉ざしたまま開けさせようとしないのだ。
私は杖を取り出すと、無言呪文を唱えた杖先で封筒を二回叩いた。破廉恥の文字が消えて別の文字が浮かび上がる。『ご名答!流石は花子・スプラウト!』という文字が現れた。「ワオ」驚きに小さく声をあげると、背後からスネイプが覗き込んできた。

「何かわかったのかね」

「え!?あ、ああ、スネイプ・・・どうやら手紙は開くことを許可したみたいだけど・・・うーん。まだ誰だかわからないのよね。この手のおふざけは昔友達とよくやっていたけど、この筆跡には見覚えがないし」

背後のスネイプにも見えるように手紙を持ち上げると、スネイプは顔をしかめて「捨ててしまえ」と吐き捨てた。

「あら?この字に見覚えがあるの?」

「・・・何度か。だが、ろくでもないものであることは確かだ。突然爆発してその指がなくなっても良いと言うのなら好きにしたまえ」

「なによそれ。・・・まあでも、一応用心して開けることにするわ。ありがとう」

それだけ言うと私は手紙をポケットに突っ込んで、1時限目の用意をしようと立ち上がった。ポモーナが別の用意をしなければならないから手伝って欲しいと言われていたのだ。

「おばさん、今日用意するのはこれだけでいいのよね?」

「ええ、そうね」

「本当に?ピンセットを書き忘れているようだけど・・・」

「あら、本当だわ」

ポモーナは私の手からメモをひったくると、ピンセットと書き加えた。


授業の用意を済ませてしまうと、今日の私はすこぶる暇だった。今日は何もすることがない。――そう、この手紙を読む以外は!
私は自分の研究室に篭ると、隠された呪文がないか確かめてから封筒を開けた。中から出てきた便箋は、封筒に書いてあったのと同じ筆跡で『親愛なる花子・スプラウト先生へ』という書き出しの何の変哲も無い手紙だった。一瞬生徒からの手紙かなと思ったのだけれど、次の文見てはっとした。まさかこの人から手紙が来るとは思ってなかった!

『親愛なる花子・スプラウト先生へ

突然のお手紙をお許しください。私はリーマス・ルーピンです。
風の便りで花子がホグワーツの助教授になっていると聞きました。セブルスも教授だったと思ったのですが、彼はまだ元気で教授をやっているでしょうか。
さて、私が手紙を書いたのは、来年度のご挨拶をしておこうと思ったからです。
来年度、闇の魔術に対する防衛術のクィリナス・クィレル先生の後任に私がつくことになりました。また近々先生方にご挨拶に伺おうと思っているのですが、セブルスのことを驚かせたいので少し協力していただきたく思います。ダンブルドア先生とマクゴナガル先生が私に協力してくれているとしたら、あなたは私が来年度ホグワーツで闇の魔術に対する防衛術を教えることを知らなかったはずです。
良い返事を待っています。

リーマス・J・ルーピン』

この男も昔からお茶目なやつだったよなあ。手紙を読んではじめに思ったのはそんな事だった。ルーピンはスネイプに行き過ぎたちょっかいをかける(と言ってもスネイプに行き過ぎたちょっかいをかけるときはだいたい後ろのほうで頭を抱えるだけだったのだけど)こと以外は今のフレッドとジョージ・ウィーズリーレベルには悪戯好きな悪ガキだった。ジェームズ・ポッターとピーター・ペティグリューが死に、シリウス・ブラックが殺人犯としてアズカバンに収容されてからは彼もまた深い孤独に捕らわれていたのかもしれない。ホグワーツに戻ってこれるので少しは嬉しいと思ったはずだ。

「・・・・・・よし、」

返事を書こうと私は手紙と道具一式を用意した。スネイプには悪いけど、私はルーピンの思惑には大いに賛成だった。私だって行き過ぎてさえいなければスネイプのことをからかうのが好きなのだ。

『リーマス・J・ルーピン様

ホグワーツにお帰りなさい!私も他の先生方と同じようにあなたのことを歓迎するわ。そして、スネイプのことを驚かせるのも大いに賛成よ。
私は今ポモーナおばさんの助手として薬草学の助教授をしているわ。たまにおばさんのかわりに授業に出る事だってあるのよ。スネイプは毎日元気にハリー・ポッターをいびり倒してグリフィンドールを減点しているわ。この間私も減点されたところよ。減点はきっと彼の趣味なのね。
しばらく見なかったけれど、ルーピンは元気にしていたかしら?学生時代いつも体調悪そうにしていたでしょ。まあ、ホグワーツに教授しにくるくらいだからそこそこ元気なんだろうけど。

あ、就任祝いは期待してくれていいわ。私からダンブルドアにお願いしておくから。

花子・スプラウト』


作戦当日、ダンブルドアとマクゴナガルの手を借りて、私はホグズミードから自分の私室にルーピンを招きいれた。

「とりあえず私の部屋に匿う事になっているわ。私の部屋には誰も来る事が無いからね」

「へえ、では私は貴重な体験をしたというわけだ。レディ・花子の部屋に入る事が出来たわけだからね」

「その言い方どこで覚えてきたのかしら?」

大人しくしてろよの意味を込めてチョコレートを手渡すと、「ありがとう」ルーピンは嬉しそうに受け取って食べ始めた。絶えず包みをはがす音が聞こえる。紅茶を勧めると、ティーカップの中に砂糖をたくさんとチョコレートを一粒入れてくるくるかき回した。それにしても良く楽しんで飲み食いする男だな。
そんなルーピンの姿をまじまじと観察して思った。彼は学生時代の頃よりももっとみすぼらしくなっていて、顔には無数の傷跡があった。本当、一体どんな生活しているのかしらねこの人は。と思わずにいられない。
その時、ようやくマクゴナガルのパトローナムがGOサインを伝えに来た。私はルーピンを連れて部屋を出た。

「ああ、うまくいくかな」私とダンブルドアがセッティングしたルーピンの執務室に入ると、ローテーブルの上に積まれたチョコレートに手を伸ばしかけてルーピンは呟いた。

「うまくいくと思うわ。だってこの部屋、ルーピンの部屋って感じがすごくするじゃない。さ、私たちは急いで隣の部屋に隠れるわよ。あ、ローブ脱いで」

「君って意外と積極的なんだね」

「どうもありがとう」

ルーピンのローブを脱がせて適当にソファの上に放り投げると、ルーピンを隣の部屋に押し込んで少しの隙間を残して扉を閉めた。もう少ししたらこの部屋を掃除して置くようにとマクゴナガルに言われたスネイプがやってくるはずだ。
「君もこっちに座っていなよ」振り返ると暗い部屋の中でルーピンがベッドに腰掛けてルーモスを唱えた杖を持っている。この部屋にはルーピンの私物が置かれる予定なので、ベッドとサイドテーブルとクローゼットしかない。執務室と比べるとよっぽど殺風景に見えた。

「そうね」私がルーピンの隣に腰掛けると、ベッドのスプリングはギシギシと悲鳴を上げた。その様子を眺めたルーピンは「ふむ、」と頷いて、何事もなかったかのように私をベッドに押し倒した。「えっ?何?」ルーピンはノックスで明かりを消した。暗くなって何も見えなくなる。

「セブルスって君の事が好きだから、このギシギシ言う音と君の声が聞こえたらどんな顔するのかなと思って」

「あ、ルーピ、まっ」私の首筋に顔を埋めたルーピンに静止の声をかけると、ルーピンはくすくすと笑った。くすぐったさに身をよじる。

「これでは私だけ役得になってしまうけれど、演技だと思ってちょっと協力してくれるかい?」

「演技?・・・ひゃ!」

耳を舐められて恥ずかしい声が出た。頭が真っ白になる。何で私こんな事に!?ルーピンは私とベッドの間に体を滑り込ませると、器用に脚でスプリングをギシギシ言わせながら私の首筋を舐めた。

「んっ」

「ほら、声我慢しないで。私が手伝ってあげるから」

耳元で囁かれてまた耳を舐められると、ぞくっとして声が出た。「あっ、ふぁ」「うん、いい感じだよ。その調子でいこうか」

そのまま結構長い時間がたったように思う。(体感時間はものすごく長かった。)絶えず性感帯を刺激され続けた私はくたくたで体に力が入らずにルーピンにされるがままだった。そしてかなり恥ずかしい事に、私の下着はだいぶ湿り気を帯びていて役立たずと化していた。その時、隣の部屋で扉が開く音が聞こえた。私たちは音に集中する。足音はカツカツと部屋を歩き回って立ち止まり、そこからは静かになった。

「あっ、ん」「く、・・・はあ」ギシギシ、ギシギシ、2人とも息が切れて、声もかすれていた。けど、今スネイプはこの部屋を覗き込んでいるに違いない。おそらくスネイプが手に持っていた杖か何かを落としたのだろう。カラン、という音が聞こえた。その瞬間、服の上から遠慮がちに胸を撫でられた。

「あ・・・やっ、ん」

身をよじると、ルーピンは「ごめん」と呟いてから私の下着をずらし、胸の突起を摘んだ。「ああ!!」
その時だ、バーン!!という音と共に怒鳴り声が飛び込んできたのは。「何をしている!!」スネイプだ。ルーピンはするりと私から離れてベッドから降りた。

「何って・・・何も?ねえ、花子」

ベッドでぐったりしたままの私は息を整えてから言った。「ええ、脱力するくらいには何もしていないわ」

「ルーピン!!」スネイプはルーピンにカツカツと近寄って胸倉を掴むと、学生時代に良く見た顔で睨みつけた。

「やあ、セブルス。久しぶりだね」

「どういうことか説明してもらおうか」

「やだな、説明も何も・・・私は来年度から闇の魔術に対する防衛術の教授としてホグワーツで働く事になったんだ。今日はそのあいさつ回りをかねて来たっていうわけだけど」

「そんなまさか・・・!いや、だが、あの執務室を見れば確かにそうなのかもしれない・・・・・・。では、他の先生方に早くあいさつ回りを済ませたらいかがですかな?見たところ・・・そこの花子・スプラウトと我輩にしかまだ挨拶を済ませていないようだ」

「そうだね。私も早くセブルスが来てくれなかったら大変な事になっていたと思っていたところだよ。でももうちょっと早く来て欲しかったかな。あいさつ回りの前にしなければならない野暮用が増えてしまったのでね」

ルーピンがそこまで言うと、スネイプはルーピンの胸倉を掴んでいた手を離した。「じゃあね、花子。協力してくれてありがとう。おかげで良いものが見れた」「早く行け!!」ルーピンは逃げるように部屋から出て行く。スネイプはそろそろと近寄ってきて、私を抱き起こした。

「本当に何もされていないのか」

「ええ、そうよ。びっくりだわ。ルーピンは耳と首にしか触らなかったのに、私、すごく精神的に疲れたわ」

スネイプはほっと胸を撫で下ろして、私の肩に額を押し付けた。

「何がなんだかわからなくなった・・・」

長い溜息をついたスネイプに「あ、そう言えば最後にちょっとだけ胸を触られたわ」と報告すれば、「ルーーーーーピン!!!!」と叫んで大股で部屋を出て行ってしまった。今回のドッキリは正直言って私も被害者なのだ。ルーピンはこれくらいの報いを受けてもいいと思った。

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