「ただいま」

「ああ、おかえりなさい、花子さん」

家に帰ると、いつものようににこやかに昴さんが出迎えてくれる。今はもう見慣れたエプロンに鍋掴みという出で立ちであるが新妻感満載で本当に公式が病気かよと思う。公式ってなんだ公式って。これ言っちゃだめなやつ!今二次創作ほんと煩いんだから!

「今日の成果はどうでしたか」

私の固い表情を見てか、昴さんはやはり単刀直入にそう切り出す。両手に嵌めていた鍋掴みを外してエプロンのポケットに押し込むと、もはやお約束のように私の上着に手をかけた。私は素直に応じて手荷物をその場にストンと落とす。あれよあれよという間に身体検査は進んでいき、瞬く間に私は下着すらも取られてしまう。普段ならば私得意の平手が炸裂するところだが、これももう慣れたもの。両手で頭を押さえられて口付けをされる。髪をくしゃくしゃにされて身に着けたアクセサリーすらも弄られ、口の中は温かい舌に蹂躙されて、口の端を飲みきれなかった唾液が零れた頃に漸く私は解放された。

「冷えたでしょう。お風呂は沸いていますよ」

自分で脱がせたくせに、よく言うわ。
私はそんな言葉を飲み込んで、脱がされた衣服と手荷物を持って脱衣所に入るのだった。



お風呂に入っている時間というものは、誰にも邪魔されない一人だけの時間であると言える。
体を清めて湯船に浸かるという行為は一種の儀式とさえ言えよう。・・・とまあ、それは私個人の趣味嗜好であって今は関係ないのだ。
ちゃぽん、とつま先から湯船に入り、肩までしっかり浸かってから今日あったことを頭の中で整理する。
今日は何回目かのポアロの日であったが、初めてそこでコナンくんと会った。本当にたまたま、偶然であったのだろうけど、そろそろ頃合かとコナンくんも思っていたに違いない。本当に侮れない子だ。偶然までも味方にするとは。
そしてやはり思惑通り、安室は食いついてきた。さりげなく私の素性を知ろうとしたが、コナンくんは私の名しか教えなかった。それどころか、私側には安室透というフルネームと探偵という職業という情報を寄越してきた。まあ、探偵は自称らしいが・・・。
そしてもうひとつ収穫があるとすれば、安室は私のことが大層気になる存在だということだ。キャンプに行くという話をちらりと出しただけで行き先まで知りたがるほどの興味ぶりだ。もしそこで行き先を知れれば偶然を装ってのエンカウントを狙っていたのかも知れない。ここで行き先をはぐらかしたコナンくんはやはり侮れない。本当恐ろしい子・・・。
そしてあの安室の反応・・・。明らかに何か企んでいる。
裏があると言い切れるだろう。引き続き警戒しなければ。
ふう、と息を吐いて湯船に沈み込んだ。ここに、この家にいる間だけはどこに居るよりもリラックスできる。今のうちにしっかり心を休めておかないと。この家を一歩出ればまた緊張の日々が始まる。一瞬たりとも気なんか抜けない。
大きく深呼吸すると、心が軽くなった気がした。
今思えば、この時間を私に与えるために昴さんは私が帰ってきてからまっすぐに私を脱がせるのかもしれない。
考え過ぎかもしれないが、もしそうだとしたらこの人も本当に侮れない人。
勝てっこないわ。



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -