「ワオ、私がスネイプから減点を頂ける日がくるなんて!」

・私は薬草学の準教授
・魔法薬学教授のスネイプと同級生
・ポモーナおばさんの代役で授業に出たらスネイプに減点くらいました。そこからがこのお話の始まり始まり。
・というわけで、以下その時のことを語ろうと思う。





「さて、今日の授業で扱うのは、この満月草だよ」

今日はポモーナおばさんの代役で可愛い一年生の授業で教鞭をとることになりました。

「わ!今日は花子先生なの?」

「なんかわくわくしてきた!」

「うふふ、こんな薬草の授業でわくわくしてもらえるなんて先生うれしいなー」

私が教室に入ると、生徒たちがざわめきたった。
自慢ではないのだけれど、私の授業は意外と評判がいい。ポモーナおばさんでさえ「あなたが人に教えるのが上手だったとは思わなかったわ」と軽く私を罵るくらいだ。

「それじゃあ、教科書を開いてね。この満月草の特徴を読み上げてもらおうかな――はい、ミス・グレンジャー」

私が満月草のページを開く前に、すでにふわふわ頭のグレンジャーが開いていたらしく、真っ先に手をあげた。なんと挙手の早い事!
グレンジャーを当てると、他の生徒たちはちぇーなんて言いながら教科書に目を落とした。グレンジャーは得意げに満月草の特徴を読み上げる。

「花子先生ってちょっとグリフィンドール贔屓しすぎなんじゃないの?」

「そうよね」

・・・今日はスリザリンとグリフィンドールの合同授業だったっけ。グレンジャーの声に紛れ込ませるかのようなひそひそ声が聞こえてきて、思わず溜息がもれそうになった。読み終わったグレンジャーに5点与えて、私はひそひそ声の主に向かって声をかけた。

「あなたたち、聞こえてたわよ。別に私はグリフィンドールを贔屓しているわけじゃないんだからね?私だって元スリザリンなんだから」

肩をすくめながら言うと、生徒たちがどよめいたのがわかる。急にざわざわとしゃべりだす生徒たちにお構い無しに私は続けた。

「それに、あなたたちスリザリンの寮監殿もとってもスリザリン贔屓だって知ってたかしら?」

「いえ、あの、その、すみません・・・」

ちょっと声を荒立てると、その女子生徒は顔を青くさせて俯いた。流石の私もここで減点はできないなーと思ったので、今回はお咎めなしとした。でも次は絶対減点してやる・・・!
「あの、花子先生?先生は本当にスリザリンだったんですか?」

ちょっと微妙な空気になっているところで急に発言したのはポッターだった。こうやってよく言えば勇猛果敢、悪く言えば空気読めないあたりは本当に父親にそっくりだと思った。少し物思いに耽ってから返事を返す。「そうよ、ミスター・ポッター」
「ミスター・ポッター」だって。私がこんな風にポッターを呼ぶ日が来るなんて!今頃天国でジェームズ・ポッターは大笑いしているに違いない。別に彼とは対して仲良くも悪くもなかったのだけれど。

「そして私はあの、スニベリー・スネイプと同級生なのである!」

「先生、スネイプ先生のファーストネームはセブルスです!」

「ご指摘どうもありがとう。ミスター・マルフォイ」

このドラコ・マルフォイという子はこうやっていちいち突っかかってくる。(主にスネイプのことでだけだけど。)こいつがナルシッサとルシウスの息子じゃなかったらけちょんけちょんにしてやるんだけどなあ。でもそんなことは出来ないのでそのうち粗でも探して減点してやろうと思う。

「スネイプの学生時代はもうちょっとこう、可愛げがあったというかなんというか」

私は手に持っていた杖と教科書を机に置くと、教室をうろうろと歩き回りながら昔話に思いを馳せた。学生時代はなんだかんだいって楽しかったなーなんて遠い目をしていたら、グリフィンドール生と一部の(スネイプファンの)スリザリン生は興味深々で話を促した。

「スネイプはさー、今はみんなの前でだけだけどあんないかつく“我輩”なんて言っちゃってるけどさ、昔の一人称は“僕”だったのよ。ミスター・ウィーズリーとかミスター・マルフォイみたいな普通のどこにでもいる男の子だったの」

「ただし、病的に魔法薬学が大好きだったんだけれどね」と笑うと、グリフィンドールの女の子が「花子先生は病的に薬草学が好きだったんでしょう?」と茶化してきた。「病的に得意だっただけよ」と返すと、みんな笑った。

「そしてスネイプは今の姿からじゃ想像も付かないけど、すごく努力家でいつも図書室で勉強していたわ。薬草学でわからない事があれば私に聞いてきたりして――何よその顔、私薬草学は学年トップだったんだからね!――あー、懐かしいなあ。スネイプったら『そうか。わかった。やっぱり薬草学は花子に』っ・・・」

言葉の途中で突然舌が唇にくっついて言葉を発する事が出来なくなった。おや?なぜだろう。そんな私を見て生徒たちも不思議がっていたが、一人が教室の入り口(私の背後だ)に注目すると、全員が注目しだした。つられるようにして私も入り口に目を向けると、そこには、なんと!渦中の人物セブルス・スネイプが鬼の形相で杖を構えて立っているではありませんか!

「はて、我輩の勘違いでしたかな?スリザリン生とグリフィンドール生がこれだけの人数この部屋にいると言う事は授業中だったかと思いましたが」

目が合うなり問いかけられる。私は自分の口を指差した。しゃべれないの!あなたが魔法をかけたんでしょう!と目で訴えてみる。スネイプは杖を仕舞った。なにそれ新手のいじめ!?

「貴殿の授業の噂はよく、聞いておりますぞ。今日くらいは静かに授業をしてみてはいかがですかな」

「よく」のところに油汚れのようなアクセントを置いてそう言うと、スネイプはばさりとローブを翻して去っていってしまった。(あれ?あの人この教室か私に何か用事があったんじゃなかったのかしら?)
グレンジャーが慌てて「フィニート・インカンターテム!」と唱えてくれて、ようやく口が自由になった。

「ぷっくく、みんな聞いた!?“貴殿”だって、くくくっ」

開口一番で噴出すと、目の前の生徒たちは一斉に顔を青ざめた。瞬間、私の後頭部にとてつもない衝撃が走る。

「いっ・・・!!」

「花子・スプラウト・・・・・・!!50点減点!!!」

どうやら用事を思い出したらしいスネイプが戻ってきたようだった。後に生徒から聞いた話によると、その時のスネイプは般若のような顔で手に持っていた分厚い本を大きく振りかぶっていたらしい。(その本がまだ手元にあるが、よく使い込まれたその本のタイトルは『薬草のすべて』というもので、おそらくスネイプの用事が私に対してだという事がわかった。きっとすぐに必要になるんだろうけど、まだ返してあげない)

「ワオ、私がスネイプから減点を頂ける日がくるなんて!」

ちなみに、この減点事件が原因で、アルバス・ダンブルドアが面白がって寮対抗の得点砂時計の隣に私の名前が入った得点砂時計を設置し、まことに不本意ながら私は寮同士の対抗に肩を並べることになってしまったのだった。


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -