愛が無くても人は産まれてくる。愛が無くても人は育つ。そんなこと今更言われなくても分かってるし、解りたくもない。世の中金さえあれば生きていける。金で買えないものは一握りほどもない。地位も名誉も愛も命さえも金さえあれば手に入る。そんな世界。金で手に入らないものがほしかった。とか、そーいうわけじゃない。命さえも金で買える世界で生きてる証は欲しかったけど。家庭環境が最悪だったからお母さん(アル中)を殺した。不細工なくせして他人を不細工だと笑うクラスメートが気色悪かったから殺した。金を貸してくれ、とか言ってきた浮浪者が汚かったから殺した。奴は笑って言った。人殺しと殺し屋の違い。奴は私を稼げるプロにしてやると言った。どーせ帰る場所もないし、することもないし。勿論金もないから世界を買えない。失敗したら捨てられるという恐怖に怯えながらも、生きてる実感を味わった。他人の生きてる証は、生暖かくて、なかなか落ちなかった。奴は絶対私に感情移入しない。所詮ウェットティッシュみたいなもんだ、私は。使うまでは必要とされていて、使ったあとは興味なし、捨てる、忘れる。幾度と仕事を依頼されても、奴との間に「信頼」とか「愛」が芽生えた感触はなかった。信頼やら愛やらについて考えたのが良くなかった。今、私は、腹部に大穴を開けて横たわっている。場所は廃屋。撃たれた。誰に。ターゲットにだよ。なんで。知らねーよ。奴は依頼内容なんて教えちゃくれない。

「お、ぃ…………い、ゎにし………どーゆー、こ、とだ…ころす、ぞ!」
「ひひっ。殺し屋に殺すぞ、って言われたら怖えなぁ!」
「、ざけんな!」
「とりあえずターゲットは殺せ。それがお前の仕事だ。」
「ゎたし、を、なめてん、のか!!!ころ、したよ!すでに!!!!!」

奴は、岩西は笑う。憎たらしい笑い方だ。

「……………ぃ、わにし…」
「お?死にそうか?」
「ゎ、わたし、は、いゎ、にしの、なんだ…………?てごま、…か……?」
「そーだな。恋人、なんてわけねーよな、ひひっ。」
「………、」
「わーってるよ。お前はあれだろ?地位も名誉も愛も命さえも金さえあれば手に入る、って言いながら愛は手に入らない人生だったもんな、わかってんだよ。」
「……………ぁ゙、?」
「ただの人殺しの女を、手駒にまで育てた理由なんざ聞くんじゃねーぞ。お前はそこまで馬鹿じゃない、そーだろ?」

愛してると呟いて彼は涙を流しました。
(最後に、遠くで蝉が鳴いたのを聴いた。)
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