・第五次始まってる
・あっさり色々ネタバレ






戦いに興じ、その身を賭け聖杯を奪い合った彼は全てを喰らい尽くされ何も残っていなかった。
空になってそれでも例え何があろうとも言峰綺礼の根底にある信心だけは何一つ変わらない。彼の首から提げられたそれに縋ろうとも、その辿る道が破滅である事には何ら変わりはない。それでも彼は何も変わることはない。歪み続けていてもその信仰心だけは本物だったのだから。
言峰からしてみれば人間の非道を尽くした彼の令呪が、神の業を背負っているかのようで、酷く苛ついた。
きっと、衛宮切嗣は最後の希望に等しい物だった。全てを知れば何かが分かると期待をしていたのに、それさえも取り上げられた彼には、醜悪とは言い難いが善良とは言いえない自己だけが残った。



「――皮肉なものだな、衛宮切嗣」



この街の二度と晴れることの無い空と 二度と訪れない繁栄と、その過去を知らないだけ彼らはマシだとでもいうのだろうか。十年前の凄惨な残骸と代償が今のこの、冬木の街であるというのに、その「過去」を知り得る者は皆それなりに老いてしまったか、或いは既に。
先に逝った彼らの言葉には、一体どれほどの価値があったのだろうか。

折角自己を受け入れたというのに、彼の居ない世界は何故こんなにも物足りないのだろうか。乾いた感情は乾いたままで、どうしようもないままだ。同じ時代生きて共有し得たはずの運命もあったというのに、ああ、それでも。










理想郷は遠く
(そこが彼らの未来)

BGM:ディストピア・ジパング/cosMo@暴走P feat. GUMI