・学パロ(stsk春組)
・病弱静雄くんとその幼なじみの臨也くん







少しだけ風が冷たくなった屋上で、自分のクラスメイトが校庭で走り回る様子をぼんやりと眺めている金髪の少年。よくあるサボりの光景だけど、理由を知っている身としてはどうしようもない気持ちになる。
こほこほ、と小さく咳き込む彼――、シズちゃんにいつもの調子で話しかける。サボってんじゃねえよ、と呟いたシズちゃんにどうせまだ薬飲んでいなかったでしょ、と薬を渡せば明らかに嫌そうな顔をされた。酷いなぁ、ちょっと傷付くんだけど。



「そういえば朝、コンビニで新しいプリン見つけたんだけど」

「……………」

「シズちゃんにあげようかなって思っていたのになあ」


ビニール袋を見せれば恨めしそうな目で睨むのは昔から変わらない。小さい頃から飲んでいようが関係なく不味いものは不味いらしいし、粉薬は慣れないとぼやいていた。生憎健康に生まれた俺には無縁な話で、目を瞑って流し込む姿をいつも見ているだけだった。

変わってあげれれば良かったのに。
いつだったか、そう言ったことがある。何時ものようにシズちゃんが学校行事に出れなくて、留守番をしていて。元の性格もあって勘違いされやすい彼は、中学に上がる頃にはサボり癖のある不良というポジションに落ち着いて、その怪力も相まって彼はどんどん孤立してしまった。
俺が、彼と変わってあげれれば。それは同情でもなんでもない純粋な気持ちだったけれど、シズちゃんは酷く傷付いた顔をした。こんなに痛くて苦しい思い、俺だけで十分だと言いたいのだろうか。彼ならありえる。

孤立していくシズちゃんは俺にとっては好都合だった。勘違いされた可哀想なシズちゃんには俺しかいない、いや、最初から俺しか居なかったんだから。



「ちゃんと飲んだ?」

「ったりめーだろ」



寄越せ、とぶっきらぼうに吐き捨てたシズちゃんにビニール袋を渡す。ガサガサと音を立てて出てきたプリンに顔が綻ぶ。こんなシズちゃんはきっと、いや、絶対に俺しか知らない。不特定多数の人間に優越感を感じる。俺しか知らない、本当のシズちゃんは、傷付きやすくて臆病で優しくて誰よりも強くて弱い化物。



「……あれ? 好きじゃなかった」



半分以上残ったプリンの容器を突き返される。嫌いなわけがないんだけど、おかしいな。好きそうだから買ったのに、失敗したかなぁと思えばなにか言いたげに此方を見てくる。あぁ、とかうぅ、とか唸って言葉を探しているようだ。



「お前も、食べるんじゃねえかなって」



言葉を理解して、状況を飲み込むのに時間がかかった。ああ、本当に、シズちゃんは。
ならあーんってしてよ、と茶化してみたら本気で恥ずかしがっちゃってさ、だからこんな君を知っているのは俺だけでいたいって願ってしまうんだ。
最初から、最後まで。










緩く、縛りつけて
(俺だけしかいないように)