・はがない3話のエロゲ朗読を静雄にさせてみただけ
・友達を作る部活で静雄と臨也とドタチン(巻き添え)がうだうだしてるような








シズちゃんが最近美少女ゲームにハマっているとは知ってたけど、まさかここまで手遅れな状態だっただなんて予想外だった。というよりは普通にシズちゃんもエロゲとかやるんだなあってちょっとだけ感心している自分がいる事も事実だ。シズちゃんはストイックというか、なんだかそういう事には淡泊そうというか、美少女ゲームを含めそういったゲームをするイメージがなかったからだろう。
粗方美少女ゲームの一つだと思って手を出したらそういったシーンがあったとかそういう類の事だろうと思っていたらまさにその通りだったようだ。
シズちゃんはそのストーリーの崇高さを語っているが、とどのつまりそれがエロゲである事には変わりない。泣きゲーとかどっから仕入れたのかわからない単語まで持ち出して、こうして人間って二次元に道を外していくんだろう。あぁ、シズちゃんは化け物だったからこれには当てはまらないのか。でも化け物も同じように道を踏み外して行くと考えると、なかなか面白いものだ。



「だからこのゲームは本当は、奥深い物語なんだ! 文学と同等なんだ!」

「素直に言えばいいじゃん、自分が変態だって」

「ちっ、違う、俺はただ…、と、友達になりたかっただけで!」



シズちゃんがエロゲの、まさに物語の本番のシーンを思いっきり俺に見せつけてくる。隣で話を聞いていたドタチンはといえばそもそもそれ年齢指定あるだろうが……、と頭を抱えてしまった。そりゃあそうだ、それに俺はどうせならエロゲをやりながらシズちゃんがどんなリアクションを取るのかに興味がある。ただしかし、エロゲを芸術だの文学だのとのたまう彼の脳内構造が少しだけ心配にもなった。



「こんなに素晴らしい文学作品を、厭らしい眼でしか見れないお前の方がどうかしてる!」

「…………だったらシズちゃん、そのシーンを声に出して読んでみなよ」

「えっ………はぁ?」



そうだよね、それは文学作品。如何わしくも厭らしくもないなら声に出して読めるはずだ。定価1万そこそこの安物ヒロインだと思っていないなら出来るよね? そう笑えばシズちゃんは自分の大切な物を傷つけられたかのように激昂して、俺の提案に乗った。どんだけそのエロゲに入れ込んでるんだよ。単純馬鹿だとは思っていたけどまさかここまでとは。でもこれは丁度いい嫌がらせだ。シズちゃんの恥かしいセリフを録音して、後で姿を散々に笑ってやろう。












「………『はやく、わたしの、いけないバルニバルを』」

「聞こえない、もっと大きな声で」

「………っ、『わたしのいけないバルニバルを…………、あ、あなたの大きくて黒光りしてる聖剣で、貫いて』…」



やけにしんとした室内に、カチカチ、と台詞を送るマウスのクリック音と時計の秒針が響く。シズちゃんがパソコンに向かい、その後ろに俺とドタチンが立っている。正直、こんな空気になるだなんて思いもよらなかった。というより、本当に乗ってくるだなんて思いもよらなかったのに。よく分からない空気の中で、シズちゃんの朗読は続く。






「『そんなにも、俺の聖剣が欲しいのか、お、お前は、……本当に、淫乱だな』」

「……」

「『い、いじわるなこと言わないで』…………、『ふん、物欲しそうな顔しやがってこいつが欲しければ、おねだりしてみろ』……」



横に居るドタチンがいい加減止めてやったらどうだ、という視線を向けてくる。嫌に決まってるね、こんなに面白い事滅多にないじゃないか。耳まで真っ赤にして卑猥なセリフを読み上げるシズちゃんは傑作だ。放課後とはいえ白昼の学校で、エロゲのセリフを同級生に強要されて朗読させられている。あの誰もが恐れる平和島静雄がだ。



「『お願いします、ご主人さま、あ、あなたの聖剣を、………………やらしいわたしの、っ、ここに、挿入して……っ』、………『聖剣ではない、正式名称を言ってみろ』…………」



つっかえながらもどうにか読み上げていたシズちゃんが止まってしまった。一体どうしたのかと後ろから覗き込み、理解する。ああ、なるほど。思わず口角が上がる、俺は今相当嫌な顔をしているだろう。言うならばそう、このエロゲの主人公みたいな感じに。シズちゃんの可哀想なくらいに真っ赤になった耳元で、態と息を混ぜて囁く。



「どうしたの? ほら、早く言ってみなよ……」

「『あ、あなたの……お、おお』」



もごもご、と口ごもる。あ、やばい、どうしよう。



「『わたしの、いやらしい、あ、あ』………………………言えるか馬鹿野郎っ!! 死ねクソノミ蟲!!」




腹に一発、重いエルボーをかましてシズちゃんは脱兎の如く逃走した。あの怪力で殴られたら骨の2本や3本くらい持っていかれると思ったけれど恥ずかしかったのか力がそんなに入っていなく、昼食が一気に逆流してきそうなくらいだった。カバンに忍ばせていたレコーダーのスイッチを押し、溜息を吐く。ああ、どうしよう。



「どうしよう、ドタチン」

「…………知るかよ」



ときめいちゃった、だなんて。










とある文学作品の朗読
(どうしようか、本当に)