・BLOOD-Cのネタバレあり
・すっごい短い





すやすやと眠る姿は恐れられた化物からは程遠いもので、人形のようだった。事実、目の前で眠る少年、平和島静雄は人間ではない。人の形をしながらも人から離れた異形。そんな彼と、取引を、いや、賭けをしたのは他でもない。単純で明快な理由。そしてあまりにも馬鹿馬鹿しい理由だった。



「だってシズちゃんは化け物だけど、優しいから」



いつまで続ける? だなんて愚問だ。
そんなこと、決まっているじゃないか。だってこの賭けには最初から終わりなんてない、ここは永遠だ。永遠に、この世界で閉じ込めて、終わりの来ることのない賭けをするんだ。
人を殺せる力を持っていても尚、人を殺せない化物。その狭間を彷徨う彼はあまりに可哀想で滑稽で、愛しい物だった。誰にも渡したくない、渡せるはずがない、俺だけの。



「……いつか、起きているシズちゃんを抱き締められる時が来たら良いのになぁ」



それはきっと有り得ない未来じゃないだろう。近いそのうちにきっと訪れるだろう、未来。彼は自分の前を通り過ぎる光を捕まえられない限り、ここからは出られない。全てを知った時、シズちゃんはどう出るだろうか。怒り狂い、俺の知らない誰かと交わした約束を破って俺を殺すだろうか。死にたくはないけどそれも悪くない。だって俺の見知らぬ誰かとの約束に縛られているシズちゃんなんて、面白くないじゃないか。
金糸のような髪の毛に手を伸ばす。さらさらと落ちていく様はまるで今の俺たちの関係のようで。髪にキスを一つ落とし、部屋を出る。もうすぐ彼が目を覚ますから、暖かいカフェオレを淹れてあげなくちゃ、勿論、たくさんミルクを入れて。










カーテンコール
(とんだ茶番劇だ)