自分の身に危険が迫っているのは十二分に理解していた。ただ眼前に突き付けられた所謂大人の玩具、というか自家発電のお供とも言えるその物体を手に、気味が悪いくらいに綺麗に笑う王子様に逆らうことが出来ない俺が情けないだけの話だ。
ニコニコと人の良さそうな笑顔で宣う王子様は外道の極みだ。何が悲しくて、こんな玩具に突っ込んで自慰行為をしなくちゃいけないんだ。使い方を知らないなんて嘘だ、知らないわけがないのに、結局従ってしまう俺が悪いのか、全部。



「ひ、……あっ、あ……………」

「デリック、気持ち良さそうですね」

「い、あ、あ、あ……」

「全く、入れただけでそんなになっていては女性を抱くことも出来ないですよ?」



させる気もない癖に、よく言いやがる。言葉を含んで睨み付ければ、ニコニコとしていた人畜無害な笑顔は一瞬で何処かに消えて、悪い笑顔で舌なめずりをする。何だよ、人の自慰見て興奮するとかド変態も良い所じゃねぇか。この似非王子様が。
イッてしまえばこのアホみたいな公開自慰も終りだ。さっさと終わらせてやる、そう自身を昂らせる。堪えきれずに漏れる甘い声に吐き気が増すけどもう少し、もう少しで終わる。射精が近付くのを悟ったのか、デリックは欲張りだ、そう笑いながら高見の見物を決め込んでいた筈の彼が此方に近付く。そして大して解されて居なかった後ろに手を伸ばされる。



「…………ひ、っ!」

「俺はデリックの一番欲しいものを知っているよ」

「ちょ、…………まさか、やっ、め」

「前だけじゃ足りないだろう?」



金属の擦れ合う音と共に後孔に硬い熱を感じれば、慣れた身体は浅ましく反応する。もしこのまま、日々也を受け入れたら、そんな事は考えなくても身体は知っている。今か今かと待ちわびるように疼く孔は、ないはずの子宮のようだ。
そして、俺は。



「何が欲しいか、言ってごらん?」










王子様へと堕ちる
(悔しいけれど、)