・EDから五年後捏造








「――アルヴィンは、やっぱり嘘つきですっ!」

「大人はウソツキなんだよ」

「ドロッセルは嘘ついたりしません」



数年ぶりに会ったというのに再会の感動や情緒は一切皆無で、さっきからこの問答を繰り返している。記憶の中の幼い少女はすっかり女性になっていて、思わず過去の自分の審美眼を褒めてやりたくなった。ぷい、と顔を逸らされるその仕草がまだ少女だった頃の彼女を彷彿とさせて、少しだけ懐かしくなって思わず笑ってしまう。



「わ、私は真剣に話してるんです! 笑わないでください!」

「いや? エリーゼ姫は幾つになっても可愛らしいなと思ってな?」

「……っ! 子ども扱いしないでください!」



頭を撫でようとした手を払われ睨む顔は心なしか朱に染まっている。怒っている、と言うよりは恥ずかしがっているんだろうか。まぁそれもそうだ、エリーゼももう17歳、年頃の女性だ。その事実が否が応にも自分の年齢についても痛感する。本当に俺は、幾つになっても変われないんだよなぁ。思わず自嘲の笑みが零れ、行き場がなくなった手で自分の頭をかく。そうだ、彼女はもう出会った頃のような子どもじゃない。髪を撫でる高さだって変わってしまったし、傍らに居た"友達"が居なくても、彼女は。



「そうだな、……ティポが居なくても話せるようになったんだもんな」

「……っ、……………で、でもティポは」



今も大事な、友達です。
少し言いづらそうに、それでもしっかりと言葉を繋いだ彼女は、変わっていたけど変わっていなかった。そうだな、あのちょっと珍妙で、口が悪いけど憎めないぬいぐるみは大事な一番の友達だった。そこに変わりがあるわけないのに。



「で? 俺はエリーゼ姫の大事な友達じゃないの?」

「アルヴィンは、嘘つきだから嫌です」



とうとう走って逃げられてしまった。エリーゼ、足速くなったなぁ、前は俺たちに着いてくるのが精一杯だったのに、今度はこっちが追いかける番か。まあ、こういうのも存外悪くないな。そう思いながら足は前へ進んでいた。










  
成れない慣れない
(大人って、難しい)