「そうやって、貴様は嘘をつくのか」



今までも、これからも。そう睨んだ眼はいつも以上に鋭く、剣呑な光を帯びている。俺はと言えば、この目の前の男についた嘘は何処からが嘘で何処までが本当だったのかも見失ってしまっていた。
初めは単純に冗談のつもりだった。あまりにも真っ白な子どもだったから、からかってやろうとひとつ嘘をついた。簡単に騙されたのが可笑しくて、ふたつ、みっつと嘘を重ねた。重ねた嘘は最初こそ重荷だった筈なのに、次第にその重さにも慣れ、更にその枷を重ねていく。心はどんどん離れていくのに、身体だけが近付くのは酷く滑稽で。
事実を知れば怒り狂うだろうか、失望するだろうか、ただどちらも俺には純粋に興味深く思えたのに。



「……泣いてんの?」

「っ! ……そんな訳あるか」



聖川の反応はどちらでもなかった。ただ何事もないように振る舞い、見えない場所で小さく泣いていた。それは幼い頃の自分を見ているようにも思えた。気丈に振る舞う彼は気高くて、憐れで、今すぐに抱き締めて愛を囁いてやりたいけれど、それじゃ駄目だ。



「俺は最初からお前に嘘なんてついちゃいないさ、真斗」

「……っ」



どんなに言葉を繕っても信用してなんていないのに俺に縋る事しか出来ない可哀想な籠の鳥。それを生かすも殺すも俺次第だなんて、こんなに愉しいことは他にないよなぁ、聖川?












羽根を殺ぎ落として
(此処でずっと、ずっと、)