どこで何を間違えてしまったんだろうなんて、今更過ぎる事を考えてみても何も始まらない。つまりは最初からが間違いで、最初から最後まで、何もかもがが違っていた。
若気の至りと言うべきか。きっと、それは一つの季節が変わるみたいに自然に、まるでそれが当然であるかのように。俺は、彼に囚われていった。
青春の残骸がもしも具現化されていたら、きっとそれは俺を睨み続けているんだろうけど、それはこっちだって同じだ。もう少し違う出会いを出来ていれば、今この関係だって変わるかもしれなかったのに、とんだお互い様だ。



「シズちゃん、終わりにしよう」



標識を金属バッドのように引きずる男に柔らかく問いかける。許せなかった。自分の気持ちに嘘をつき続けるのも、大嫌いで大嫌いで殺したいと思っているのはきっと変わりがないのに、その気持ちに齟齬が生じるのも、矛盾に苛まれるのも、全部耐え切れなかった。そう、これは俺の我儘だ。平穏を望む化け物に手を出したのは俺だったのに、自分の都合でそれをなしにしたいだなんて虫のいい話だ。ふざけるな、ノミ蟲、そう彼は罵るだろうか。孕んだ矛盾を消化出来ない俺には別にそれで構わなくて、どこまでも自分勝手だとは自覚しているけどどうしようもないんだ。だって、俺は、シズちゃんの事を。



「終わりってなんだよ」

「そのままの意味だよ、終わりにしよう」



こんな不毛な争いはもうやめよう、そう笑うと嫌悪感を少しも隠さずに睨みつける。だって、君だって本当は平和に暮らしたかったんだろ? 俺はもう君には関わらない、それだけじゃだめかい? 答えが分かりきった質問を繰り返す俺は十分滑稽だと思う。呆ける彼の手を思い切り引いて、抱きしめて、キスをしたらどうなるんだろうなんて、そんな事を考えてしまってる時点で大体終わってるなあ。本当に、どうしてこうなったんだっけ。



「終わるも何も、始まってもないだろ」



心底不思議そうに君は言うから、どうしたらいいのか分からなくなってしまう。アドリブの効かないタイプじゃないのに、ただ、シズちゃんにだけはどうしても違う。予測できない化け物だからって思っていたけど、きっとそれは、多分。
睨みつけていた残骸が、嗤ったような気がした。









ターンエフェクト
(最初から、きっとまた)