ジリジリと照りつける太陽が自己主張を始めてアイスが美味しい季節になった。年中食べてるじゃないか、と後藤には呆れられたけどやっぱり夏に食べるアイスは別格でしょ。冬に暖かいとこで食べるアイスもなかなかのものだけど。
七夕らしく沢山の折り紙で飾り付けられた笹を眺めていると、自然と笑みがこぼれる。達海さんの思い付きで振り回すのやめてよ! と言いながらも何だかんだで楽しそうにしていた有里を思い出す。短冊に書かれた願い事は個々の性格を表している。とりあえず近い目標を書いていたり、更に先の目標を書いていたり、誰かのために、願っていたり。



「馬鹿正直だよなぁ、…………なぁ椿?」

「!」



俺が気付いていないと思ったのか、声をかければ面白い位に驚く椿に堪えきれずに笑い出す。散々笑って可哀想になったからアイスを一つだけ分けてあげた。まぁこれくらいのカロリーならすぐに消費しちまうだろ、若いし。



「これってさ、星に願いが届くのはずっとずっと先なんだよね」

「…え?」

「何十光年って離れてるから」



だから幼い頃に短冊に願った事も数十年して叶う頃にはとうに自力で叶えているんだろう。それにどんなに強く願ってもどうにもならない事の方が多いから、無理難題で恋人達の逢瀬を邪魔するほど俺はもう子供じゃない。



「お前が自分で掴んだんだよ」



何を、とは言わないけれどそれを察したのか椿は小さく頷いた。頭をぐしゃぐしゃ、と掻き混ぜると呆けた顔が情けなく歪む。あぁ、でも一つだけ、こいつのチキンでビビりなメンタルは直してやれないかなぁ。なんて、一年に一度しか会えない恋人達には他人の惚気なんて要らないか。
重ねた唇は少し冷たくて、甘かった。











願いを蹴飛ばす
(あの星まで届くように)