・うたプリアニメがやばかったから椿くんにも1000%LOVEしてもらった







「何か椿くんはこういう学校に来るようなタイプじゃないから意外っていうか」

「自分でもそう思います……」



有里さんの言葉は尤も過ぎて返す言葉がなくて恐縮してしまう。実際に表舞台に立つ事を志望してないにしたってそれなりの度胸や自己主張が必要な世界だから、チキンで小心者の俺にはやっぱり向いてないんじゃないかって思う。それでも、どうしても俺はここで学びたかった。

田舎で育った俺にとっては無機物有機物に犇めき合う都会が恐ろしく思えた。たまにしか来ない場所だから尚更なんだろうか、止めどなく流れる人と音に埋もれて、息が苦しくなった。元々の性格もあって誰かに言葉をかけることも出来ない、不安と絶望に押し潰されそうなとき、それが聞こえた。喧騒の中で、やけにクリアに。



「空から歌が降ってきたみたいで」



優しくて、暖かい歌だった。今まで俺が聞いていた音楽とは全然違ったけれど、すとんと心に落ちてくるような感覚を受けたのは初めてで、気がつけば時間を忘れて見詰めていた。モニターに映ったその人は、堂々として、凛としていて、俺にはきっと絶対になれない存在だと思えた。でも、だからこそ。



「……いつか、自分の作った曲を歌って欲しいんです」



まだ彼に歌ってもらえるような曲を作れる自信はないけれど、ここで学んでいく中であの歌声に相応しい歌が作れれば、そんな夢みたいな事を考えているだなんて口にすれば少しだけ恥ずかしいけれど、今の俺にはこれが一番の夢だ。
有里さんはきっとそういうことを馬鹿にするような人じゃないってわかってるけど不安になる。チラリと有里さんを見れば、凄く優しく微笑んでいた。



「そっか、そういう目標があるのは良いことだよね」



それが椿くんの原動力なんだもんね、とニコニコ笑う有里さんに一気に恥ずかしくなる。じゃあ二番目でいいから私にも曲を書いてね、そう笑う有里さんに俺なんかでよければ、と答えれば椿くんの曲がいいんだよ! と不満を漏らされる。本当に優しい人だなぁ。



「…………早く会えると良いね」

「え?」

「なんでもないよ、ほら行こう? 授業始まっちゃうよ」



言うや否や、ぐいぐいと引っ張られる。きっと、ここでの生活が俺自身を含めて色々と変わっていくんだろうなんて、分かりきってはいるけどそれを不安どころか楽しみにしている自分に、少しの変化を感じた。











未来の地図を
(描くのは俺)