天気予報は連日外れてそろそろ記録が生まれるかもしれない。茹だるように暑い、暑い。身体中の体液が根刮ぎ流れ落ちてるような感覚に吐き気が増す。
太陽が照らすあの緑に愛された物ばかりにそのカミサマは意地悪だったから、きっと俺もそのうち生きれないかもしれないなんて、軽い冗談のつもりでしか考えていなかった。
楽しくて仕方なかった、走り回るのが楽しくて、呼吸の方法を忘れた。そして気が付いたら動けなくなって、戻ることも出来なくなった。
そう考えたら俺はあの緑に愛されてたのかもしれない。白い部屋でブラウン管に映る緑に輝くグラウンドをぼんやりと眺めた。





懐かしい夢とは裏腹な寝苦しさに目を覚ますと、そこにはこれまた懐かしいユニフォームを着た今よりも若いよく知った人間が馬乗りになっていた。ああこれも夢みたいだな、夢の中で夢みてるなんて、何て言うんだっけこれ、と薄く笑えば目の前の男は泣き出しそうに顔を歪めた。
全部集めてぐちゃぐちゃにかき混ぜて、渡してあげればよかったのに、ごめん。そう困ったように謝るのが理解できない。なんでお前が謝るんだよ、お前は俺だからつまり謝るのは俺なんじゃねえの。
窓の外で霧みたいにさらさらと降りだした雨に目の前の俺も消えてしまいそうだった。俺はお前に感謝してるよ、頑張ってくれてありがとう。お前のおかげで俺が、今があるって事、分からないほどガキじゃないよ。




――俺はずるしても戻りたい

――それはもうダメになったのに?

――うん、それでも、まだ俺は




いきたいから。
生きたいか行きたいか、どっちだったかなんて分かんないし本当は分かってる。一瞬重なった手に、絡まった指に、俺は自分が戻っていくような、沈みゆくような、懐かしくて暖かい錯覚に陥る。なぁ、お前もそこから見てろよ、お前の後輩たちが今すげえ事しようとしてんだよ。全員で掴み取る勝ちの価値を、よく知ってるだろ?
瞬きをしてしまえば懐かしい姿は緩やかな雨に吹かれたみたいに消えてしまっていた。思わず膝を抱えてしまう。あーあ、今日はもう眠れないかもしれないなぁ、寝不足なんだけど、と悪態をつく俺の顔は、きっと笑っていた。












七曜日/用具室
(ようこそ、次の世界へ)

BGM:Ghost Apple/People In The Box