元々年甲斐もなくふらふらした人だし、伝えなくても伝わるとかそういう事を言うつもりはないけれど。たまに不安になる、この人は自分をどう思っているんだろう、とか。



「達海さんは肝心な事は言わないよね」

「そお?」

「言わない」



一番重要な部分は隠してる。自分で気付けって事なのか。それは確かに指導者としては良いけれど、俺はあんたの選手じゃないしここはピッチの上じゃない。
言葉にしたことをすぐに後悔した。つまり俺はこの人に愛の言葉を囁いて欲しかったって事? 何それ、女々しいとかそういう問題じゃない。確実にうざったいタイプじゃん。自分が言われたら即刻退場を願う感じの。



「俺持田にはちゃんと伝えてるつもりだったんだけどなぁ」

「……なにが」



つい反射で何がとか言ったけどいやもういいよ達海さんごめん、なんか俺の気の迷いだった。うわぁすげえ恥ずかしい。そんな言葉を要求してるとかそれが自分とか恥ずかしすぎて消えたくなる。



「まぁ大体気持ちよくなってる時だから覚えてないのかもね」

「は?」



持田すぐふにゃふにゃになっちゃうからねー、と達海さんはニヤニヤと悪人さながらに笑いながらにじりよる。言ってる意味がちょっと分からない。何言ってんのこの人。いや皆まで言わなくて良いけどなんでそうなった! 本当どんな思考回路してんの!?



「じゃあ達海さん頑張っちゃうわ」



お前に伝わるように! ってちょっと待て何張り切ってんだよいやそもそもそういう意味で言ったんじゃないんだけど! とはいえ完全に抵抗しないあたりが何かもう終わってる。満更でもないってそうだよなぁ。だって好きだもん仕方ない。
既にぼんやりとした意識の中で耳を甘く噛みながら囁かれた言葉に、俺はこの人には敵わないと確信してしまった。悔しいけれど。












貴方の言葉で揺らして
(「愛してるよ」)