「何だか凄く滑稽な光景だよねえ」

「わらえねえ、よ」

「ふぅん?」



ふざけんな、目の前の似非王子は澄ました顔をして本を読みながら、足は俺自身を責め立てる。滑稽な光景だと笑った、多分俺も端から見てたら腹を抱えて笑っているかもしれない。それが自分が対象でないからであって、こんな、笑えるわけがない。今すぐその余裕そうな顔を殴り飛ばしてやりたい。




「まさかモッチーが変態だったなんて」

「ぐ…」



すっかり臨戦体制になってしまった自分の下半身に嫌気が差す。でも違うだろ、こんな事されたら誰だって反応するっつーの。それでも王子様は俺が特殊な性癖を持った人間のように笑うから、段々自分がそうなんじゃないかという錯覚に陥る。いや、意味わかんねぇから、流されてるんじゃねえよ俺。



「最低だな、あんた……」

「駄犬の調教は早い方が良いからね」



駄犬って誰の事だよ、王様捕まえて駄犬とかそんな事言えるのはあんたくらいだ。
そろそろ僕飽きてきたんだけど、このまま一人で続きする? それはに俺に折れろって事なのか、ふざけんな、絶対に嫌だ。既にこれ以上ない屈辱を与えられているというのに。荒い呼吸を繰り返しながら目の前の王子様を睨み付け、そして理解する。なんだ、人の事散々言っておいて。



「あんただって変態じゃねえか」



人の踏んで興奮してるとか、変態以外の何物でもないじゃん。振り回されてばかりも馬鹿にされてばかりも性に合わないんだよ。精一杯流されないように笑ってやると一瞬面食らったような表情になり、すぐに不適という言葉がまさにぴったりな笑顔に変わる。その顔を飼い犬にしてみろよ、トラウマなんてレベルすっ飛ばしてるぜ?



「っ、ぐ」

「あははっ、確かにそうかもしれないや」

「なっ、う、……あっ」

「それで、その変態に喘がされる気分はどうだい?」



昨日みた映画の感想を聞くようにさらりと聞いてくる王子様に腹が立つ。ちく、しょう、ふざけんな、言葉にならない罵声は全て耳を疑いたくなる嬌声に変わって、脳みそをぐらぐらと揺さぶっていく。ちょっとマジでヤバい、これは、ヤバい。
俺の変化に気付いたのか、まるで本当の王子のように慈愛に満ちた笑顔を向けて頭を撫でてくる。気持ち良い、もっと、もっと、あぁ、これ絶対に後悔するんだろうな。でももう何も考えらんないからどうにでもなればいいや。












脳髄を融かして混ぜて
(ぐちゃぐちゃにすればいい)