その両足から感覚が抜け落ちた時、俺は静かに絶望した。すんなりと受け入れられた訳ではなくて、それこそ悔しさややるせなさ、どうしようもないやり場のない気持ちに苛まれる事だってあった。いっそ、恨んでしまえれば楽だった。彼に全てを押し付けて、彼のせいだと言えれば、きっと彼は受け入れるだろう。でもそんなことをしても何も変わらない。お互いに傷を増やすだけだし、なにより俺は後悔はしていないからだ。

見込みがない、といわれた。それは今シーズンとかではなくて、これからずっと。きっと、未来永劫。改めて言われなくても分かっていた。感覚がなくて立つことも儘ならない。まださよならも言っていないのに、その別れはあまりにも突然で。心のどこかで俺は他人事だと思っていたのかもしれない。傲りとかではなくて、何処か違う世界の話じゃないかと



「持田さん」

「リハビリ、終わったの?」

「……はい」



いつから居たんですか? と聞けばさっき着いたばっかだから、と笑う持田さんに俺は酷く弱くて狡い人間だと実感する。今だってこうやって彼を、俺の隣に居るのが苦痛になるはずなのに、縛り付けている。ごめんなさい、ごめんなさい。俺が弱くてビビりだから。
ピッチで見た気迫の塊のような持田さんはもうあの日から見ていない。フードを被ってふらふらとやってくる持田さんは、歳よりも子どもっぽく見える。コロコロと表情を変えて、時々優しく微笑む。その笑顔を見ると、どうしようもない罪悪感が胸を占める。良いはずがないんだ、俺がそんな風に彼を縛り付けて。



「椿くんは強い子だよねー」

「そう、ですか?」

「…………うん、強いよ」



優しく撫でる手に、表情に、泣き出したくなる。違う、違うんです。俺はいつでも弱いままで、一人が怖くて貴方を巻き添えにして。出来る事なら何にも囚われないでボールを追いかけて欲しい。もうここには来ないで、俺の事は忘れて欲しい。それも本心なのに、それなのに、全く逆の事を求めている俺は、最低だ。












愛されたいなど痴がましい
(ごめんなさい、ごめんなさい)

title:伽藍