ヒーローなんて良いものじゃない。友達と遊んだり出来ないし、恋だって儘ならない。こんな仕事辞めてやると思っていたけど結局こうして続けているのは、少し不服だけど彼のお陰だ。きっとあのまま辞めていても続けていても後悔していたんだろうから、彼は私を助けてくれたヒーローだ。そこにポイントは発生しないけれど。
「ねぇ、おじさん」
「おじさんじゃねーだろが」
「いたっ」
女の子の額にデコピンとか、軽いとはいえ有り得ないんですけど。悪態を吐けばアイドルにそれは不味かったか? と何処か抜けた答えを返す。ったく最近の若者はよー、とかぼやいてる時点で既におじさんはおじさんじゃない。子どもにするように頭を撫でて来る彼は歳の離れた私達を色々と気にかけてくれているから、大衆の人気はなくても仲間内からはそれなりに慕われている。
まるで、家族みたいに。
でもそうじゃなくて私は、貴方の娘になりたいんじゃなくて、妹になりたいわけでもない。私は、私は……!
「し、知ってるわよ名前くらい! 虎徹、…………………さん」
言葉にして自分でも驚いた、どうしてファーストネームで呼んでしまったのかと。無意識のうちに呼びたかったから? そんなことはあり得ない! とは言い切れない自分が悔しい。私の言動か挙動に驚いたのか、面食らったような顔でこっちをみるおじさんにどうしようもない羞恥心が沸いてくる。あぁ、バカじゃないの、もっとあったじゃない、彼はワイルドタイガーっていう名前があって、私達は仕事仲間でライバルで。あぁ、もう。
私が本当はヒーローなんて向いてないんじゃないかなぁとぼんやり思うのは、前みたいな理由じゃなくて。あの時、彼の最愛の人について触れられた時に、ショックを受ける自分と他に、少しだけまだチャンスはあるんじゃないかって思った自分がいた。最低だと自覚はしている。ヒーローとしても、一人の女としても最低だ、嫌なヤツだ。それでも、きっと。
「大丈夫か? カリーナ?」
こんな私に手を差し伸べてくれる貴方は、私がどんなに嫌な人間でも助けてくれるんでしょ? 大丈夫だ、俺に任せておけって笑うのかなぁ、やだ、簡単に想像出来るなぁ。
だって貴方は泣き出したくなるくらいに優しい私のヒーローだから。
Don't worry,be happy
(愛しのヒーロー!)
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