何でこうなった。
目の前の光景にそう言わざるを得ないと言うか、そもそも何で自分がここに居るのかも曖昧になる。アルコールの力は恐ろしい、その恐ろしさを実感しながらも頭はくらくらする。それは本当にアルコールの力だけなんだろうかと問われればそんな訳ないだろうと声を大にして言える。



「ひ、あ、あ……っ、やぁ……」



水が欲しい。何でも良いからここから離れたい。熱を孕んだ嬌声に水音、下手なDVDよりも気持ちが高まる。そんな酒の勢いで一夜の過ちを犯すようなガキじゃない。昂る熱をどう抑えるかを考えていれば俺より大人なその人は、傍観を決め込んだと察知したんだろう、俺を見てニヤリと笑った。



「椿、持田の舐めて」

「へ……」

「ジャイアントキリングだよ」



意味は違うかもねーと笑う達海さんに固まる椿くん。ちょっと待て、何を言い出すんだこの監督様は。馬鹿正直な犬はその言葉に狼狽えたようだったけれど、彼も大量のアルコールを摂取していたわけで。誰だよ飲ませたの、いや俺だけど。面白がって飲ませたのは紛れもなく自分だから救えない。何かを決意したのか椿くんが此方ににじりよる。ちょっと待て、何で本当にそんな変なトコでガッツあんのお前。



「ちょ、椿くん、マジ……」

「……もちださん」



すみません、と言った彼にはもう理性なんて微塵も残っていなくて目先の快楽だけを追っている。その謝罪に全く意味はないんだろう、目は溶けきって居て、色を孕んでいる。ジャイアントキリングどころか必死にご奉仕しているだけにしか見えない犬の頭を撫でてやると嬉しそうに笑った。本当にどんな調教されてんだよこの犬は。飼い主がこんな姿見たら発狂するんじゃねえの?
まぁ椿くんも明日の朝には後悔するんだろうな、後悔先に立たずとはよく言ったものだ。後悔じゃなくて違うものが立ってるけど、とか、笑えないから、この馬鹿げた空間で笑ってるのはあんたくらいだよ。
持田だって気持ち良いくせに、そう笑う達海さんに最低だ、と吐き捨てればなにそれ今更じゃんと笑われる。そうだね今更だ。せめてもの抵抗に噛み付くようにキスをしてやれば、彼は満足そうに言った。



「やっぱりお前ら良い眼するよな」



試合中も、今も。











瞳に欲情しちゃう
(さいてい、だ!)

title:伽藍